プロに会う―喘息・アレルギー分野の最新の話題
Professional Interview
吸入ステロイド療法
―最近の話題―

近年,気管支喘息の治療戦略として薬物療法の選択肢が増えており,中でも吸入ステロイドが中心的治療薬となっている.今回の対談では,吸入ステロイド療法の新しい知見として,骨代謝および副腎への影響,さらには動脈硬化に対する効果について報告していただき,気管支喘息治療の今後の方向性や課題についても言及する.

【司 会】足立 満◎昭和大学医学部第一内科学教授
【ゲスト】宮武明彦◎宮武内科院長
(発言順,敬称略)


このHPはALLERGIA TRENDS 2007年12月号(メディカルレビュー社)に掲載されたものを再編集したものです。


1. わが国における喘息診療の変遷
  変わったもの・変わらないもの



足立──今回は,喘息診療特に吸入ステロイド療法における最近の話題について,診療所を開業されておられる専門医としての立場から宮武明彦先生にお話を伺いたいと思います.最初に,わが国における喘息診療の変遷についてご説明を頂きます.

宮武──わが国の喘息診療の変遷としては,喘息患者が増え続けている一方で,喘息発作入院と喘息死の著減があげられます.言い換えれば,喘息は入院が必要な疾患から外来で治療できる疾患へと変わり,さらに専門医でなくても治療できる疾患へと移りつつあります.
一方,気管支喘息の最も重要な気道過敏性の原因はいまだに不明であり,難治性喘息の治療の困難さも相変わらず解決しておりません.また,厚生労働省の新薬許認可速度にはやや問題があり,そのため,わが国の医師は医療現場において,同時期に諸外国の医師と同じ薬の治療効果等についての臨床経験を共有できないといった事態も起こっています.実際に吸入治療薬の国内外発売時期を比較した場合,多くの薬剤で10 年以上のタイムラグが存在しており(表),このような事態は今後の改善が望まれます.



足立──新薬発売の遅延は,国内許認可制度とグローバル化の中で,日本市場を後回しにする製薬企業との複合的な問題が原因かと思われますが,諸外国で使用されている薬剤がわが国で使用できない状況は今後も続くものと考えられます.しかし,その中でも喘息治療薬は,気管支拡張薬主体から抗炎症薬主体へと変遷するにつれ喘息発作入院や死亡率が低減してきた観点からすれば,一応順調に進歩してきたといえるでしょう.今後は,宮武先生のご指摘のように,国内外発売時期のタイムラグの解消が重要な課題であると思います.


2. ステロイド吸入療法に関する新しい知見
  骨・副腎への影響と動脈硬化抑制作用



足立──新しい知見をご紹介頂く前に,実地臨床における気管支喘息治療について解説をお願いします.

宮武──気管支喘息の治療戦略としては,薬物療法,禁煙指導,アレルゲンの除去などがあります.薬物療法としては,β2‐ 吸入刺激薬,グルココルチコイド薬吸入,DSCG 吸入,テオフィリン製剤内服,ステロイドホルモン薬内服,ロイコトリエン受容体拮抗薬内服がありますが,現在ではグルココルチコイド薬吸入が中心的治療薬となっています.例えば,2006 年12 月の宮武内科における喘息治療薬の処方内容(喘息患者686 名)をお示ししますと,吸入ステロイド薬82.4 %,吸入気管支拡張薬45.8 %,テオフィリン製剤16.9 %,ロイコトリエン受容体拮抗薬8.6 %,DSCG 49.4 %という状況でした.

足立──DSCG の使用率が高いようですが,専門医としてDSCG を処方されるポイントは何ですか?

宮武──軽症例の場合は1 剤でコントロールすることも可能ですが,当院には他の医療機関でうまくコントロールできなかった患者が多く来院されます.
また近年は,来院された時点で既に吸入ステロイド薬が処方されていることが大変多くなりました.コントロールできていない理由として考えられる点は,患者の吸入ステロイドのコンプライアンスが適正でないか,また,その患者に対して吸入ステロイド薬の剤型がマッチしていなかったなどが考えられます.このような症例に対しては,再度吸入指導を実施し,吸入ステロイドの剤型変更を考慮し,さらに長時間作用型β2‐ 刺激薬の追加投与が選択肢として考えられます.また,私の場合はこれに加えてDSCG カプセル(20mg )を処方することが多く,特に,コンプライアンスに問題がないのに,咳のコントロールがうまくいっていない患者や難治性喘息患者等に,DSCG カプセルを処方すると,それまでと比較して著明に症状改善がみられることが多く,患者自身からもDSCG が効果があったとの反応を得ることが少なくありません.

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