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アレルギー相談室に寄せられたご質問より

Q.アスピリン喘息(ASA)は難治性が高いと聞きました。ASAの臨床上の特徴と治療法について教えて下さい。(札幌市E.W.)
A.アスピリン喘息は興味深い病態であります。小児喘息患者にはほとんど認められず、成人の気管支喘息患者の約5〜10%に認められます。発症は35〜40歳頃に最も多く、多少女性に多い傾向があります。アスピリン、あるいは鎮痛解熱剤を服用することによって軽い息苦しさを自覚する程度から意識消失を伴う急性喘息重積発作まで、bronchoconstrictionが少なくとも15〜30分以内、遅くとも120分までに発症する病態です。アスピリンを初めて服用した喘息患者に起こることもあれば、以前から服用していても何ら症状を示さなかった鎮痛解熱剤が、ある日それを服用したとたん、突然急性発作を引き起こす場合もあります。アスピリン喘息患者の約50%に鼻茸の合併が認められ、気管支喘息、鼻茸、アスピリン過敏症をアスピリン喘息のTriasと呼ぶ人もあります。日本アスピリン喘息研究会において、略称をAIA(Aspirin-induced asthma)とすることに決まりましたので本文ではAIAを用います。


医療法人宮武内科 宮武 明彦
当院へ気管支喘息で10年(1/4/80〜1/3/90)以上継続通院しているAIA20例とNon-AIA19列の2群間に重症度に差異があるか否かを、臨床的特徴ならびに入院回数、入院日数、外来受診回数、ステロイド依存症等を指標に比較検討しましたので、その結果を回答にかえたいと思います。
臨床的特徴:平均年齢:AIA56.4歳、Non-AIA55.7歳、平均罹病期間:AIA14.7年、Non-AIA21.3年、鼻炎:AIA70%、Non-AIA42%、鼻茸:AIA55.0%、Non-AIA5.3%、平均IgE:AIA545IU/ml、Non-AIA519IU/ml、平均好酸球数:AIA8.6%、Non-AIA7.1%、抗原皮内テスト陽性率:AIA45.0%、Non-AIA63.1%。
難治性の指標:(1)発作入院平均回数:AIA4.4回/10年、Non-AIA3.1回/10年、(2)平均入院総日数:AIA130.2日/10年、Non-AIA98.5日/10年、(3)外来受診平均回数:両群ともそれぞれ約20回/年、(4)ステロイドホルモン依存症:AIA95%、Non-AIA84%。
結果:10年以上にもわたって治療の必要な気管支喘息難治例をAIAとNon-AIAの2群に分けて比較検討すると、鼻茸は統計学的に有意にAIAに多かったが、その他の指標については上記のごとく有意差を認めなかった。
治療:シクロオキシゲナーゼ阻害作用を有するアスピリンや非ステロイド性抗炎症薬は、アラキドン酸から各種プロスタグランジンへの合成を障害するため、アラキドン酸カスケードに代謝異常が生ずると考えられている。しかし、そのメカニズムの詳細は不明である。また、種々の食品や医薬品添加物;タートラジン(食用黄色4号)、琥白酸エステル構造などが誘因となって発症する場合も多い。そのためシクロオキシナーゼ阻害作用を有する薬剤を除外するだけでなく、食品、薬品添加物にも注意を払い徹底した排除が必要である。もし、アスピリン喘息発作に遭遇した場合には、治療としては急性重積発作に対する処置に準ずるので詳細は省略するが、注意しなければならない点は、琥白酸エステル構造含有のステロイド製剤(例えば、Solu-Cotef、ブレドニンなど)を避けることが望ましい。
結論:現在我々にできることは、気管支喘息患者に対して詳しく問診を行い、一刻も早くアスピリン過敏症を診断し、もしアスピリン喘息が疑われる場合には、使用禁忌薬剤などについて十分説明を実施することが重要である。そうして患者がステロイド依存症に陥らないように、また難治化しないように誘因物質および禁忌薬剤の使用を避けることである。

文 敵
谷口正実ほか:アレルギー37:639,1988
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