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インフルエンザワクチン接種
 今年もインフルエンザの流行する季節を迎え、「かかる前に予防、こじらす前に治療」のスローガンを掲げ、その予防には有効性が証明されているインフルエンザワクチンの接種が勧められている。
 今シーズンの主な変更点は、接種回数について、中央薬事審議会から、「2回皮下に注射」を「1回または2回を皮下に注射」に変更された点である。
 1回または2回についての判断は、現場で医師が決定し、実施することになるが、集団で接種することの多い老人福祉施設等での混乱を防ぐために基準を定め、すでに通知したところである。すなわち、1.65歳以上の高齢者に対して厚生省の神谷班の研究結果をもとに1回接種とすること2.13歳未満のものは従来どおり2回接種3.13歳以上64歳未満のものについては2回接種を原則とするが、近年、確実にインフルエンザに罹患していたり、毎年インフルエンザワクチン接種を受けていて、医師が基礎免疫があると判断できるものについては、1回接種でも良いとしたこと--である。
 今年のインフルエンザワクチンはWHOの推奨を受け、Aソ連型「ニューカレドニア株」、A香港型「パナマ株」、B型、「山梨株」を採用しているが、いずれの株も特に成人の抗体保有率が低いという国立感染症研究所からの最近の報告もあり、考慮しなければならない。
 予防接種法の改正によるインフルエンザワクチン接種の法制化は今国会では未提出となり、今年は従来どおり任意接種のため全額自己負担で、しかも、健康被害が発生しても医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構法による被害救済の対象とある。
 インフルエンザワクチンの製造量は、昨年のパニックを繰り返さぬよう倍増して760万本を製造・認可を受けている。生産量の算定は、昨年接種者(約320万本)と接種希望して接種出来なかった者が、従来どおりの比率で2回接種するものとしてその上限をとったもので、十分量と考えられる。
 しかし、一部での買占めや、流通の不手際があると、地域によっては一時不足の状態が発生する事も考えられるので、各医療機関においては、余分なストックをしてシーズン後に返品することのないようお願いしたい。
 なお、インフルエンザの治療に際しては、治療薬の開発や、脳炎、脳症発生時の解熱剤投与の影響について、情報の提供をしているところであるが、十分ご検討・ご配慮をお願いする次第である。
日医ニュース 第942号 平成12年12月5日

若年層への「禁煙指導」は医療関係者の当然の使命
 先般、東京において開催された国際肺癌学会において、9月14日「”禁煙”東京宣言」なるものが採択された。そして今後、日本医師会とも協力しながら「宣言」の実施に取り組みたいとする意向が示された。情報紙によると「宣言」では、政府に対しては@子どもの喫煙によるニコチン中毒を防止するための新しい方法の開発A政府公報・公共広告を通して喫煙の害・禁煙の啓蒙B禁煙を目的としたたばこ税の増額C喫煙者に関わる医療費の一部自己負担制の新設−などを要望することが盛り込まれているという。またこのほか医学会や医療機関に対し禁煙運動と禁煙教育への協力支援を依頼すると共に、産業界・メディアに対し、たばこの広告宣伝およびセールス活動を廃止するよう要請するとのこと。
 世界的に、がん死の中で最も死亡率の高い肺がんは、その9割が喫煙および受動喫煙によるものとされており、従って肺がんは予防可能なものと見なされ、「禁煙」は肺がんの発生抑止と高騰する医療費の抑制を図るための”最良の方法”として、この宣言が採択されることになったという。
 去る8月8日、世界保健機構(WHO)と世界銀行は、喫煙者の増加に歯止めがかからなければ、21世紀中に約10億人が喫煙による疾病で死亡する恐れがあるとの合同報告を発表した。先進国では喫煙者への医療保険の支払いが、最大で国内総生産(GDP)の約1.1%に相当すると推計して、従来の健康被害に加え、経済的な面での「損失」が強調された。
 一方、本年7月、アメリカのフロリダ州で、喫煙者や家族らがたばこ大手5社に対して損害賠償を求めていた集団民事訴訟で、州高裁がメーカー5社に総額15兆6千億円の支払いを命じたという。ここでは罪を罰するよりも金のあるところから取ってやろうというアメリカ訴訟社会の異常ぶりがよく表れているが、本来ならばたばこメーカーだけが一方的に責められるべきではなく、むしろ自分の健康に不注意であった喫煙者自身にも大いに責任があるのではないのか。わが国では厚生省が3月に定めた「健康日本21」計画で、”成人喫煙率を半減させる”という当初案の数値目標がたばこ業界からの反対を受けて消されてしまった。
 禁煙してもその効果が現れるのは20〜30年先のことだからということで喫煙を続ける愛煙家は多いが、今の時代にあっては、医療関係者であればたとえ自らは喫煙者であっても誰でもがその使命として、特に若い世代に対する「たばこ対策」「禁煙活動」に積極的に取り組むべきであり、決して無関心であってはならないのではないか。
大阪府医ニュース 2000年(平成12年)10月11日第2181号

ITは手段であって決して目的ではない
 最近、森総理大臣は情報通信技術(IT)関連に多くの予算をつぎ込む事を発表した。しかし、思いつきで提案した国民パソコン講習券配布構想は、有識者の失笑を買っている。
 確かにIT革命が米国の景気を牽引したことは事実である。日本は現在、平成大不況の真っ直中であり、米国は史上最長の好景気である。IT関連への財政支出は景気刺激のための一つの方法ではある。しかし、講習券配布のようなばらまき的な政策は不適切であろう。
 IT革命は一つの要素で成立したものではない。まず第一にパソコンの高性能化と低価格かが必要であった。一部屋くらいの大きさがあったコンピューターはノート版となり、価格も個人で買える金額となった。こうして研究機関や企業だけでなく個人もパソコンの使用が可能となったのである。
 第二はインターネットという国際的な通信網の発達である。インターネットは米国の軍事施設の通信システムが核攻撃によって中心施設を破壊され麻痺に陥ることを回避するために網目状に構築されたものであり、中心がなく網目状ゆえに大学研究施設や民間企業の接続が可能となったのである。この通信網は今や世界的な財産となっている。
 第三に光ファイバー網による通信速度と通信容量の大幅な増大化が必要であった。かつて日本がバブルにうかれていたときに米国は情報ハイウェイ化構想によって着々と光ファイバー網を全国に整備していたのである。景気対策も兼ねて政策としてITに投資するのみなら、米国に比べて未熟で通信費の割高な日本の通信網整備に対してまず十分に支出するべきである。
 しかし、重要なことはITそのものの整備ではなく、そのITを用いて何をなすべきかである。ITシステムを整備する事だけに満足してはならない。
 現在、府下24地区の都市区医師会が地域医療情報化推進事業整備補助金を得て、各地区独特のネットワーク構築を試みており、この補助事業は今後も継続されることが期待されている。郡市区医師会においてはネットワーク構築自体を目的とすることなく、ネットワークが地域医療にどのように貢献できるのかを見定めることが重要である。
 国家政策としてのITへの投資は日本の未来にとって必要不可欠の事項であるが、ITが何に貢献できるのかを見定めずに国の予算をつぎ込むことは、これまでの公共事業のように利用されない道路や橋をむやみに建設する愚策と同様の結果となる。あくまでITは手段であって目的ではないことを忘れてはならない。
大阪府医ニュース2000年(平成12年)11月8日第2184号

死亡者全体の8割が医療機関で死亡
-医療経済研究機関調査研究報告-

 日本では医療機関で死亡する人の割合が死亡者全体の約85割を占めているが、米国や英国では5割程度にとどまり、病症数の多さと入院へのアクセスの良さが病院で死亡する人の割合を高めている可能性があることが、医療経済研究機構(上條俊昭専務理事)の調査研究報告で明らかになった。また、米英のナーシングホームなどに該当する介護施設で死亡する人の割合は、米国の10分の1、英国の6分の1程度と低い。
 報告書は日本の医療環境について、「病院が終末期のケアの大部分を引き受けているが、病院では終末期の患者特有のニーズに対応しきれないため、多大な労力や費用を費やしているにもかかわらず、QOL(生活の質)の観点からは満足できる成果が必ずしも得られていない」として、終末期のケアを医療中心型から看護・介護中心に移行させる必要があると提言している。
 この終末期ケアの制度・政策に関する調査研究は、日米英3国の医療費などの各種データの分析や文献調査有識者に対するヒアリングを通じて、わが国の終末期ケアの実態を明らかにすることを目的に実施した。
 日米英の死亡場所を比較すると、死亡総数に占める医療機関での死亡の割合は、日本の79%に対し、米国(51.7%)、英国(54.0%)とも5割程度にとどまっている。病院で死亡する人の割合をOECDデータでみると、日本は1960年の22%から70年は38%、80年57%と増え、90年には74%と急上昇し、90年代以降は80%未満で推移している。最も大きな違いがあったのは介護施設・ナーシングホームなどの入所施設での死亡割合で、米国20.6%、英国13.0%に対し、日本は老人保健施設0.4%、特別養護老人ホーム1.7%の計2.1%にとどまる。
 また、日本の死亡前の医療費についても試算。それによると、医療機関で死亡した人の死亡前1カ月以内の入院医療費は年間の死亡者全体でも7859億円、97年度の一般診療費約23兆円の3.5%程度、入院医療費の多くは「死亡直前に入院する患者ではなく、長期療養の末に死亡した患者が長期にわたって消費した医療費である」と分析。「医療資源の有効活用のためにも入院期間の短縮が緊急の課題である」と結論づけた。
大阪府医ニュース メディカルインフォメーション MEDIFAXから
  平成12年9月27日(毎週水曜日発行)


時事 医師の喫煙率は一般の約半分
日医会員喫煙意識調査

 日本医師会と国立公衆衛生院が実施した「日本医師会員喫煙意識調査」の結果が発表された。詳しくは日医雑誌第124巻(9月1日発行)で報告されているが、医師を対象にした喫煙の全国的な調査は初めてである。
 調査は本年2月から6月にかけて、無作為抽出された約4500名の日医会員(男性3000人、女性約1500人)を対象に実施され、回答率は87.0%と高率であった。
 結果は、男性医師の喫煙率は27.1%、女性医師は6.8%で、2年前の一般国民のデータの男性喫煙率51.6%、女性12.3%と比べ、約半分となっている。
 年齢別喫煙率をみると、男性医師の場合、40歳代31.0%、30歳代30.7%、50歳代27.6%で、女性医師では70歳代8.2%、40歳代7.8%、50歳代7.4%で平均を上回っている。
 診療科別でみると、男性医師では呼吸器科、循環器科で喫煙率が低く、泌尿器科、耳鼻咽頭科で高かった。また、男女とも喫煙者の6割以上が禁煙を考えたことがあると答えている。
 府医で隔年に実施している「会員意見調査」に喫煙状況の項目があり、診療所長、病院長、勤務医別に集計されている。平成7年での喫煙率は、診療所長27.2%、病院長33.8%、勤務医25.5%であったが、年々その割合が減少し、平成11年ではそれぞれ26.6%、28.9%、22.6%となっている。男女別集計は行われていないが、今回の日医の調査結果と同じ傾向である。
 日医の調査では、医療機関での禁煙状況と患者への禁煙指導についても問うている。病院や医院をすでに禁煙にしていると答えた割合は、喫煙者の3分の1以上、非喫煙者の約半分近くあり、反面、医療機関内での喫煙に制限を設けるべきでないと考えている人も5%未満いる。患者への禁煙指導では、「患者に喫煙の危険性を具体的に説明」「患者にたばこをやめる助言のみ」との答えが高率であった。
 本年5月、大阪府は「健康日本21」運動の事業として、「大阪府におけるたばこ対策ガイドライン(医療機関編)」を公表した。ガイドラインでは、医療機関は分煙、禁煙化に主体的に取り組める立場にあり、医師は医療や検診の受診者に対して、禁煙指導や禁煙サポートを積極的に行うことができ、結果として多くの禁煙者を生み出す立場にあると指摘。医療機関が禁煙のお手本を示すことにより、他の公共施設や職場の分煙、禁煙化が推進できるとしている。
 今回の調査の日医担当者は、「国際的にも医師の喫煙率が低下すると国民の喫煙率も低下する。今後は医師の喫煙率をさらに減らす方向で考えていきたい」と述べている。
 時系列変化をみるため調査の継続と、調査項目の簡素化を切望する。(用)
大阪府医ニュース 平成12年9月27日(毎週水曜日発行)

「65歳以上」2190万人に
過去最高、5.8人に1人 総務庁推計

 総務庁が発表した「敬老の日」の15日現在の高齢者推計人口によると、65歳以上の高齢者は2190万人で昨年より74万人増加し、過去最高となった。総人口に占める割合も0.6ポイント上昇し、17.3%と過去最高を更新した。国民の5.8人に1人が高齢者の計算で、少子高齢化がさらに進んでいることが浮き彫りになった。
 65歳以上の人口を男女別で見ると、女性が1277万人で、男性の913万人の1.4倍。高齢者のうちの女性の割合は65歳以上で58%、75歳以上で65%、85歳以上で71%と、高齢になるに従って増えている。
 65歳以上の労働力人口(就業者と求職中の完全失業者の合計)は493万人で、男性の36%、女性の15%が仕事に就いているか、仕事に就く意欲を持っている。特に65-69歳の男性ではこの比率は53%に達している。
 諸外国との比較では総人口に占める65歳以上の高齢者の割合で、スウェーデン、イタリアに次ぐ水準になっている。
 国立社会保障・人口問題研究所によると、65歳以上の人口は今後も増加傾向を続け、2025年には3312万人と今年の1.5倍となる見込み。
 全人口に占める割合は、27.4%に達する見通しだ。
日本経済新聞2000年9月15日(金)

バイオの主戦場に 機能特定これから
 バイオ市場は「2010年には国内だけで25兆円規模」(通産省)となり、情報技術(IT)関連と並んで21世紀を代表するビジネスに育つといわれる。中でもたんぱく質関連は、その主戦場となる見通しだ。
 各社がたんぱく質関連ビジネスに取り組むのは、病気に関係するたんぱく質が発見できれば、多くの病気の原因がわかり、大型の医薬品開発につながるため。たんぱく質そのものを医薬品として使用できる可能性もある。
 約10万もの遺伝子は、ヒトゲノム(人間の全遺伝情報)を構成する30億個の塩基がつながる配列のところどころに書き込まれている。その遺伝子から作り出された様々なたんぱく質は、筋肉や内臓などを構成する一方で、病気の原因にもなるとされている。このため世界中の医薬品会社などが、病気に関連する遺伝子とともに、より新薬開発に有効なたんぱく質の研究にも取り組みつつある。
 セレーラ・ジェノミクスなどによりゲノム解読はほぼ終わったが、病気に関係するとみられる約3千のたんぱく質の機能はほとんど特定されていない。たんぱく質は遺伝情報を記録するDNA(デオキシリボ核酸)に比べて検出が難しいほか、たんぱく質同士の相互作用により、性質が変わりやすいからだ。
 たんぱく質を利用した医薬品などを開発するには、まず解析手法を確立することが急務。ヒトゲノム解読は米国が先行したが、たんぱく質分野ではまだ突出した成果は出ておらず、日本企業も大きなビジネスチャンスを期待できる。
日本経済新聞2000年9月15日(金)

酷暑大阪 最高気温平均35.1度/毎晩熱帯夜
今世紀最も暑い8月

 「今年のナニワの夏は20世紀で一番暑かった」--。大阪の8月は1ヶ月間の最高気温の平均が35.1度を記録し、1883年の観測以来、最も暑かったことが日本気象協会などの分析で分かった。8月は観測史上初めてすべての日が「真夏日」になるなど、まさに記録ずくめ。太平洋高気圧が居座っているうえ、都市部のビルの排気熱などが原因の「ヒートアイランド現象」が強まっているためで、専門家は「大阪は21世紀も”酷暑”傾向が強まる」と予測している。
●記録ずくめの暑さ
 大阪の8月はすべての日が最高気温30度以上の真夏日となった。すべて真夏日となった年は1994年などにもあったが、今年はさらに、35度以上になった日が20日もあった。これは94年の18日を上回る観測史上最多。毎日の最高気温の平均35.1度は、これまでの記録だった94年の平均35.0度を6年ぶりに塗り替えた。
 寝苦しい夜も記録的。最低気温が25度を下回らない熱帯夜も、観測史上初めて8月の31日間続いた。これまでの記録は94年の25日だった。最も低かったのが8月19日の25.1度だから、8月は1度もこの温度を下回らなかったことになる。毎日の最低気温の平均は26.4度で史上4位だった。
 今年の特徴は8月下旬になっても暑さが和らがなかったことだ。21日から29日の9日間、最高気温が35度を超えた。日本気象協会関西支社によると、大阪の暑さのヤマは通常、天神祭のころの7月下旬から8月上旬にかけて。8月下旬にもう1度ピークを迎えたのは「観測史上初めてではないか」という。
●相乗効果で上昇
 これだけの暑さが続くのは、「ヒートアイランド現象のせい」と山元竜三郎・京都大名誉教授(気候変動論)は指摘する。工場やビルの冷房の排出熱などが、都心部の気温を郊外より高く押し上げる。さらにビルや舗装道路が蓄積した太陽熱を暗くなってから放出し、寝苦しい夜になる。
 これに拍車をかけたのが今夏の太平洋高気圧。平年なら日本の南の海上に下がって衰える時期に、勢力を盛り返して西日本を覆った。
 晴れの日が多くなったうえ、台風の進路を太平洋高気圧がさえぎって「う回」させ、上陸、接近を許さなかった。
●21世紀は「亜熱帯」?
 今夏の高気圧の発達が来夏も繰り返されるかは不明だが、山元名誉教授は「来年以降も厳しい暑さの年が増え、今後、8月は連夜が熱帯夜となっても不思議ではない」と予測する。
 平均気温が20度を上回る月が4-11ヶ月続く地方を「亜熱帯地方」とする定義もある。同教授は「西日本の夏に限ると、すでに亜熱帯気候に属している。今後こうした傾向が強まる可能性が大きいのでは」と指摘している。
日本経済新聞 2000年9月1日(金)
免疫制御の遺伝子特定 抗体の仕組み解明へ道
京大など発表

 細菌やウイルスなどの外敵から身を守るために、体の中で働いている免疫システムを制御している遺伝子を突き止めることに京都大学とフランスの医療機関の共同研究チームが成功した。なぞの多い免疫の仕組み解明につながるだけでなく、将来、アレルギーなど免疫に関係した病気の治療にも役立つという。1日発行の米科学誌「セル」に発表した。
 研究チームの本庶佑京大医学部教授らが突き止めた免疫システムの制御遺伝子は「AID遺伝子」と呼ばれる。研究チームは昨年にこの遺伝子を見つけていたが、機能は不明だった。しかし、実際にこの遺伝子を壊したマウスを作ったところ、免疫が働かず無菌状態でしか生きられなくなることがわかった。
 フランスのネッカー小児病院(パリ)の研究グループが、重い感染症を起こす「高IgM症候群」という病気の患者の遺伝子を詳しく解析したところ、AID遺伝子に異常があることが確認できたためAID遺伝子が免疫システムを制御しているとの結論を出した。
 人の体内に細菌などの抗原が入ると、抗体が抗原にくっついて攻撃する。これを免疫システムでは抗原の種類に応じて抗体を別の種類に変化させる「クラススイッチ」と、抗体が抗原に結合する力を高める「体細胞突然変異」という2つの重要な仕組みが知られている。
 ただAID遺伝子がどのような仕組みでこうした制御をしているかははっきりしておらず「今後の大きな研究課題」(本庶教授)としている。
 高IgM症候群の患者は国内に約100人いる。今回、原因遺伝子が特定されたことで、早期診断や遺伝子治療などへの足掛かりがえられた。また今後クラススイッチの仕組みが解明されれば、アレルギーの治療にもつながる可能性がある。
日本経済新聞 2000年9月1日(金)
出生率最低1.34少子化加速 99年人口動態統計
年金や医療費負担増さらに

 少子化に歯止めがかからない。厚生省が29日まとめた1999年の人口動態統計によると、99年中に生まれた子供の数は117万7千人、1人の女性が生涯に産む子供の数を示す合計特殊出生率は1.34となり、ともに統計をとり始めた1899年以降の最低を更新した。女性の晩婚・非婚傾向や出生年齢の高まりが背景にある。少子化が続けば、働く世代の人口減につながり日本の成長力を弱める要因になる。社会保障制度では、若い世代が高齢者を支える公的年金や医療保険の財政悪化につながりかねず、現役世代の税・社会保険料の負担を計画より引き上げなければ制度が息詰まるおそれもある。少子化対策や年金・医療制度の改革が急務といえる。
 出生率は前年より2.1%(約2万5千人)減った。70年代前半の第二次ベビーブームに生まれた女性の出産が減ったことが主因だ。長男・長女を産む平均年齢も0.1歳上がり、27.9歳となった。  合計特殊出生率の1.34は前年より0.04下がり、将来にわたって現在の人口を維持するために必要とされる2.08との差はさらに広がった。国立社会保障・人口問題研究所が97年にまとめた人口推計では、99年の出生率を1.38とみていたが、実際は下回った。女性の未婚者の割合が予想より大きかったことなどが原因という。
 人口推計は厚生年金などの財政計画をつくる基礎となっている。今後も実際の出生率が推計を下回り続ければ計画が狂う。97年の推計では、女性の未婚化に歯止めがかかるという予測に基づき、合計特種出生率は2000年に下げ止まり、長期的には、1.61程度で安定すると予測した。
 92年にまとめた人口推計では、1.80程度で長期的に安定するとみていたが、予測がはずれ約0.2ポイント下方修正した。この修正で2050年度の厚生年金の保険料率は、約4%の引き上げが必要になった。今後も同じように計画に狂いが生じるおそれがある。
 出生率が推計値を下回り続けている背景には、女性の晩婚、非婚化が予想以上に進んだという事情がある。この傾向に歯止めがかかるとの見通しから、人口推計は出生率が増加に転じるとみている。だが女性が働きながら子供を育てるための環境整備など小子化対策は進んでいない。厚生省などは「出生率に多少のぶれはあるが、いまのところは予測の範囲内」と説明している。だが、子供を産み、育てやすい社会を実現しなければ出生率の向上はおぼつかない面もある。
日本経済新聞2000年6月30日(金曜日)
医師の禁煙率は男性27.1%、女性6.8% 初の全国調査
 日本医師会員の喫煙率が一般国民の約半分であることが7月18日、日医と国立公衆衛生院が実施した「日本医師会員喫煙意識調査」の調査結果で明らかになった。男性医師の喫煙率は27.1%女性医師は6.8%で、医師の年齢構成にあわせて調整した一般国民の喫煙率(1998年、男性51.6%、女性12.3%)を大幅に下回った。医師を対象にした全国的な調査はこれが初めて。
 同日会見した日医の櫻井秀也常任理事は「調査結果を踏まえて、これ(喫煙率)を減らしていく方向で考えなければならない」と延べ、喫煙率減少を掲げたWHOや「健康日本21」などの動向を踏まえ、医療関係者が率先して禁煙に取り組むべきとの考えを示した。
 調査は今年2月〜6月にかけ、日医会員からランダムに抽出した男性医師3000人、女性医師1466人を対象に実施した。回答数は男性2500人、女性1271人の計3771人(回答率87.0%)だった。
 調査結果によると、男性医師の喫煙率は27.1%、女性医師は6.8%。年齢別でみると、男性医師は[1]40歳代・31.0%[2]30歳代・30.7%[3]50歳代・27.6%--の順で高く、女性医師は[1]70歳代・8.2%[2]40歳代・7.8%[3]50歳代7.4%--で高かった。
メディカルインフォメーション MEDIFAXから
大阪府医ニュース 平成12年8月2日(毎週水曜日発行)

99年度の医療保険医療費は28兆5000億円
-老人保健が40%突破-

 厚生省保険局が7月17日に発表した「1999年度(平成11年度)医療費の動向」で、医療保険医療費の総額は28兆5000億円となり、うち老人保健が過去最高の11兆8000億円、構成比も初めて4割を越える41.3%となっていることが明らかになった。医療費は前年度に比べて1兆円増加したが、このうち老人保健が9000億円増となった。老人保健は、受診率、1日当たり医療費ともに被用者保険、国保よい高い伸び率を示しており、老人医療費の増加が医療費全体の伸びを押し上げている状況が明らかだ。そのほか診療種類別医療保険医療費では、調剤が2兆3000億円となり、前年度に比べえ21%増と大幅な伸びを示すなど、医薬分業の進展を裏付けるものとなっている。
メディカルインフォメーション MEDIFAXから
大阪府医ニュース 平成12年8月2日(毎週水曜日発行)

ヒトゲノム解読完了
 ヒトゲノムの解読は人間の病気をはじめ老化現象や寿命、あるいは人間一人一人の違いなど、生命に関連したあらゆる分野に深く関係する。その基本的な情報が明らかになることで、医療技術はもちろん人間観にも大きな影響を与えるのは確実だ。製薬企業は病気の原因遺伝子にピンポイントで狙いを定め、治療効果の高い新薬開発に走り出し、情報関連企業も遺伝子をチェックできる診断装置など、ゲノムと情報技術(IT)を組み合わせた新分野を開拓する。高齢化社会の到来を前に、巨大な遺伝子関連ビジネスが生まれる。
 ヒトゲノム解読計画に対比される米アポロ計画は、人類を月に送るという当時は実現不可能と思われた高度な目標をあえて掲げ、その実現を通じて半導体技術や燃料電池など現在につながる数多くの仁義術をもたらした。また、人類の地球観にも影響を与えた。
 ヒトゲノム計画も同様に、二十一世紀の科学技術や生命観に大きな変革を迫る可能性がある。現在の医薬品は対症療法的なものが多いが、遺伝子データをもとにした薬品は病気の根本的な原因を取り除く能力を持ち得る。遺伝子は人間の老化や寿命にも深く関連しており、研究の応用は既存の医療の方法を塗り替えると見られる。
 ゲノムの利用によって、アルツハイマー病など難病の治療薬や副作用の少ない抗がん剤が誕生すれば、医療サービスを受ける消費者にも大きな恩恵だ。簡単な検査で肥満しやすい、がんにかかりやすいといった体質がわかるようになり、健康管理や治療の受け方も変わる。
2000年6月27日(火曜日)日本経済新聞
ゲノムとは 遺伝子情報の設計図塩基30億個の配列
 人間はおよし60兆個の細胞でできている。親から受け継いだ遺伝情報は、それぞれの細胞の核の中にある染色体と呼ぶ組織に納められている。
 染色体の実体はデオキシリボ核酸(DNA)という物質で、人間の場合引き延ばすと全長2メートルにもなる。DNAはアデニン(A)、チミン(T)、グアニン(G)、シトシン(C)と呼ぶ4種類の化学物質(塩基)が約30億個つながっており、これらの文字で表現された情報の全体をゲノムとよぶ。今回、セレーラ社はどういう順番で文字が並んでいるかを解読した。
 遺伝子はこの配列のところどころに書き込まれている。約10万個あるといわれる人間の遺伝子は人体を構成する様々なたんぱく質を作る働きを担い、成長から老化まであらゆる生命現象をつかさどっている。
 遺伝子に異常があると必要なたんぱく質ができず、病気の原因にもなる。
2000年6月27日(火曜日)日本経済新聞
国際ヒトゲノム計画
 人間の全遺伝子情報を明らかにすることを目的に1990年ごろから日米欧など6カ国の大学や国立研究機関が発足させた国際共同プロジェクト。米政府は国立衛生研究所(NIH)などに10年間で約30億ドル(約3千億円)の研究予算を投じた。日本政府は理化学研究所を中心に過去5年間に約100億円を投入している。
 国際計画は当初2005年まどの完了を目標に掲げたが、解析装置の性能向上や米ベンチャー企業のセレーラ・ジェノミクス社の独自の解読による追い上げにあい、目標を2003年に前倒し、さらにセレーラ社の解読完了に合わせて、これまでの成果をまとめて会見した。解読したデータの特許化をめぐっても、国際計画とセレーラ社は対立してきた。
2000年6月27日(火曜日)日本経済新聞 きょうのことば
ゲノム解読を科学と医療の進歩に
 クリントン米大統領にブレア英首相と役者もそろって、人間の全遺伝情報(ヒトゲノム)の解読完了が26日に高らかに宣言された。人間という生き物の形や構造を決め、その生命活動を不断に制御している「生命の基本ソフト」であるゲノムの全体像を、人類はついに自ら手中にしたのである。
 四種類の遺伝文字が約30億個並ぶゲノムは、ドラマチックで起伏に富んだ生物進化の過程が刻み込まれている。一種の歴史的・科学的データベースといえる。生命40億年のなぞに迫る解読の意味は大きい。
 技術的には、ゲノム解読により、医療や医薬品開発の仕組みが、質的に大転換をとげる可能性がある。がんはもとより脳卒中や心臓病など、病気に関係する遺伝子の発見や特定が進めば、画期的な治療法や予防法、有効な薬剤を、論理的・合理的に開発できると期待されている。  これまで、膨大な試行錯誤と経験の蓄積に支えられてきた医薬品開発の合理化が持つ経済的な効果は大きい。また、一人一人の体質や病気に対する抵抗力などを勘案して健康を管理し、治療法を選択するオーダーメード医療へ道も開ける。
 今回のゲノム解読完了宣言は、官民二つのチームの同時発表という形をとった。官は、日米欧6カ国が国際協力で進めてきたプロジェクトで、民は米国のベンチャー企業、セレーラ・ジェノミクス社である。
 国際共同チームは10年前にスタートして、2003年に解読を終える予定だった。昨年からセレーラ社が参入、公開されている官のデータを使い、大規模な設備を導入して猛烈なスピードで解読を進め、あっという間に官を追い越してしまった。
 大量の特許を出願し、契約した大手薬品企業には有料で特定の遺伝子情報を提供する。こうしたセレーラ社の方針に、人類共通の財産として、成果をすべて公開する方針の国際チームは反発、厳しい批判と対立がこの半年間続いていた。
 多額の税金を投入したプロジェクトがベンチャーに追い越されてはたまらない米政府が、今回は何とか引き分けの共同発表に持ち込んだ。しかし、原則公開か先行者の利得を認めるか、まだ決まっていない。特許の扱いも不透明のままだ。7月の沖縄サミットでは当然議題に上ると予想されるが、議長国の腹は決まっているのだろうか。21世紀を開く技術はITばかりではない。
2000年6月28日(水曜日)日本経済新聞社説
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