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ヘルスこの一手
平石 貴久 「がんを防ぐ」

 がんは、遺伝子が傷つけられることによって細胞ががん化することにで起こる。遺伝子を傷つけて細胞のがん化を促すものには、化学物質、ウイルス、放射線、紫外線、食物などが挙げられるが、海外の研究では、食生活の改善で予防できるがん死亡の割合が35%、禁煙によって予防できるがん死亡の割合は30%という推計がある。
 がんを防ぐ方法の第1はやはり、食生活の改善と禁煙である。食生活とがんの関連性については様々な研究が進められている。例えば、塩分が多い食生活が続くと胃がんになりやすく、一方で、βカロテンやビタミンAを含む緑黄色野菜を多くとると、がんの予防につながると考えられている。
 また、静岡県のがんの死亡率が低いのは、緑茶を多く飲む習慣と関連が深いという研究報告もある。

二台要因は食事と喫煙

 がんのなかには一部、遺伝性のものがあるが、かぞくのなかにがんになる人が多いというケースは、同じような食生活を送っていることが背景であることが多い。
 喫煙については、例えば喫煙男性が肺がんで死亡する割合は非喫煙者の数倍高いという報告がある。  たばこの煙には約200種類の有害物質が含まれ、この中には、ベンツピレンなど10種類以上の発がん性物質が含まれており、喫煙ががんのリスクを高めることは多くの研究が示している。  がんを防ぐ第2の方法は、早期の発見と治療の徹底だ。検診でがんが発見された患者の死亡率は明らかに低い。検診の過程でも、DNA検査や、血液などの測定でがんの状態を知る「腫瘍マーカー」検査など、最新の技術を活用していくことが大切だ。
 最近、ある国立病院のがん専門医の間で「がんの患者さんが減ってきた印象がある」ことが話題になっている。
 現在、日本人のおよそ2人に1人ががんを患っている。ただ一方で、この数十年、がんの研究も進み、がん検診の進化によって、がんの予備段階で発見されるケースも増えている。もちろん、がんの予防についての多くの啓発活動も地道に続けられてきた。
 「がん患者が減った印象」は医師の感覚的なもので正確なデータないが、この感覚が本物になる日がくることを強く願っている。
(内科・スポーツ医)
日本経済新聞 2013年11月9日朝刊


ヘルスこの一手
平石 貴久 「健康長寿の秘訣」

 20年前に、日本舞踊の地唄舞をみる機会があった。白い着物に身を包んで舞台に立つ名手、武原はんさんの全身の美しさと、じっと片足を上げたまま微動だにしない美しいポーズに感動したのを今でもはっきり覚えている。
 その姿が脳裏に浮かんだのは、最近、ロコモティブ症候群という言葉をよく耳にするからだろう。この症候群は、骨折や筋肉の衰えなど運動器の障害で、将来寝たきりや要介護になるリスクの高い状態になることだ。推定患者数は約4700万人で、まさに国民病になりつつある。
 数年前、中高年の男女の太ももの太さは血管の病気と因果関係があるとデンマークで発表された。それによると、男女とも太ももの周囲が62センチの人が、最も死亡リスクが少ないそうだ。それより太い人はどれだけ太くてもリスクは変らないが、それより細い場合、細くなればなるほど死亡リスクは高くなるという。

太ももをしっかり鍛える

 骨格体系が違う日本人には単純には当てはまらないが、太ももの太さは筋肉で決まり、筋肉がほどよくしっかり付いたら、血管も血管内の筋肉も心臓も強くなり、全身循環の改善につながる。
 高齢者に多い、大腿骨の付け根に近い部分の骨折は、股関節の中で折れる内側骨折と外側骨折がある。内側骨折は血流が悪いため治りも悪く、その後寝たきりの生活に進む例も多い。太ももをしっかりと鍛えておくことは、介護を必要とせず、自立した生活ができる「健康寿命」をのばすことになる。
 ロコモティブ症候群の対策となるトレーニングには様々なものがある。自宅でできる簡単なものでは、例えば、片足を軸にして立ち、上半身を伸ばしたまま、もう片方の足を前後・横・斜めに大きく踏み出すと、硬くなった股関節の柔軟性の改善につながる。
 暴騰に書いた武原はんさんのような美しい姿は難しいとしても、片足立ちのトレーニングも効果的だ。床に足がつかない程度(約10センチ)に片足を上げ、体が傾かないように1分間、その姿勢を保つ。点灯しないように、つかまるものがある場所で行う。
 このほか、腰を上げ下げするスクワットや軽いダンベルを使ったトレーニングなどがあり、専門知識を持った整形外科医などのアドバイスを受けて取り組むとよい。
(内科・スポーツ医)
日本経済新聞 2013年10月19日朝刊


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荒牧 麻子 「夏場の食卓」

 日中はセミの大合唱、夜ともなれば草むらから虫の音が響き渡るこの頃だが、猛暑は一向に収まる気配を見せない。このままいくと夏バテ気味で食欲も今ひとつ、おまけに少し体重も減ったようだと感じる人も出てきそうだ。
 古くからそうした時に勧められているのは、ビタミン類が豊富なウナギやシジミ、タンパク質の多い卵、牛肉などの食品だろう。ウナギはその生態や収穫量の減少に関心が集まっているようだが、店先から漂うかば焼きの煙の匂いに食欲を感じ、スタミナ補給にと、土用丑(うし)の日に味わう人は多いはずだ。
 ウナギに限らず、時に食欲を誘うのは、目の前でさばく食材をそのまま調理し、また香り高い調味料や香味野菜などを一緒にした鉄板焼きやお好み焼きなどだ。ワイワイと食卓を囲めば自然と食べる量が増える。
 一方、暑さで毎日さっぱりとした嗜好を求めて麺類が多くなり、水分補給として清涼飲料水や甘い冷菓ばかりでは、糖質からのエネルギー供給はあるものの、それを消化吸収し代謝するのに必要な他の栄養素が不足し、低栄養を招くことになりかねない。
料理は作るが、疲れた体を引きずりながら台所に立ち、調理する気力も体力も暑さで湧かないこともあるだろう。ました一人暮らしなら状況は一段と憂慮される。

枝豆で手軽に栄養補給

 そうした時に役立つのは夏に旬を迎える枝豆だ。豆と野菜両方の栄養的な特徴を持つことがその理由の一つ。たんぱく質はもちろんのこと、ビタミンA、B1、B2、Cにカルシウムと食物繊維が期待できる。一人暮らしであっても、ゆでた豆をさやから取り出し、小分けにして冷凍保存すればムダをせずに済む。
 ゆでたてに塩をサッと振りそのままほお張るも良し、お好み焼きやたこ焼き、卵焼きに入れるのも新鮮だろう。海老とタマネギのかき揚げに使えば彩りが一段とさえる。
 このほか、ミキサーなどかくはんできる機器でスープにすれば丸ごと栄養が味わえる。牛乳やクリーム、バターと相まって仕上げるポタージュは、温めても冷やしてもよい。幼児から高齢者まで食べやすい濃厚な一品となる。
 この季節、完熟し甘さが増したスイカや桃、ブドウなど新鮮な果物を添えて水分補給することも忘れずに。
(食卓プロデューサー)
日本経済新聞 2013年8月17日朝刊


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平石 貴久 「心房細動を防ぐ」

 最近、中高年の方の間で、まったく自覚症状のない脳梗塞がよく見つかる。これは磁気共鳴画像装置(MRI)など検査方法の進化のおかげだろう。脳梗塞でいちばん怖いのは心原生脳脳塞栓症(心臓から飛んだ小さな血栓が脳血管に詰まった病気)で、その80%以上が心房細動から引き起こされる。
 心房細動は不整脈の「横綱」だ。心臓を動かす電気刺激が心房内に多発したり、異常な電気刺激が発生して小刻みに震え、正規の心臓の収縮と拡張ができなくなったりする状態をいう。心房細動のせいでできやすくなった血栓が血流に乗り、心臓の冠動脈に詰まれば心筋梗塞、脳血管に詰まれば脳梗塞を発症する。
 心房細動はほとんど自覚症状もなく検診などで見つかることが多く、私は若者の突然死の大きな原因になっていると考えている。心房細動は一度かかると完治しづらい病気で、診断されると、その後長年のもわたり服薬が必要だ。急激な運動やストレスは厳に慎まなければいけない。例えば、階段を駈け上がって電車に飛び乗る、たばこの煙でよどむ会議や飲み会に居続けるなどは危険で、大声で激怒をするのもよくない。文字通り「短気は損気」である。

「短気は損気」を自覚する

 心房細動の患者さんの36%は生涯のうちに脳梗塞を起こすといわれる。したがって心房細動そのものの治療はもちろん、心筋梗塞や脳梗塞予防が大切だ。
 心房細動の一般的な治療では、血を固まりにくくする抗凝固剤を服用する。これらの薬剤の進化は著しく、最近の新しい薬では、グレープフルーツなどは食べられないといった食事制限の禁止事項も減っている。ただし、新薬は値段が高く、患者さんの経済状況を考慮すると、全員に使える薬とは言い難い。
 日常生活では、塩分や高脂肪食の過剰摂取は避け、十分な水分補給と睡眠を確保すること。節酒や禁煙は当然として、コーヒーやお茶でカフェインをとりすぎた場合は、その分多めの水分を補う。これからの季節は冷房の効きすぎなど、温度差に注意することも大切だ。
 大事なのは、細かいことでも医師に「これいいですか?」「これやっちゃダメ?」と尋ねること。友達同士で話すようなことでも遠慮せず、何でも相談をしてほしい。
(東京ミッドタウンクリニック 特別外来医師)
日本経済新聞 2013年6月8日朝刊


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荒牧 麻子 「食品の栄養表示」

 先日、駅の売店で手にしたサンドイッチに、次のように書かれたシールが貼られていた。品名調理パン「柔らかカツサンド」。原材料の欄には豚かつ、パン……。ここには二十数品目の使用または含まれている食品名がびっしりと小さな文字で並んでいた。
 食事を調整して体力維持や健康を確かなものにしようと思い至ると、食材や料理の栄養情報を日常的に利用する機会は多くなる。中でもkcal(キロカロリー)という単位で表示されるエネルギー量、mg(ミリグラム)単位のナトリウム含有量を食塩相当量のg(グラム)に換算した塩分表示などは利用回数の多い項目だ。
 加工食品は、賞味期限のほか、使用されている原材料名や調味料などアレルギーとも関連する項目への注目度が今後さらに高まるだろう。健康増進、食品の安全性、さらに食品選択などに役立てられるよう、食品表示に関する法律も近く整備されるようだ。
 過剰になりやすり食事量や特定の栄養素が実際にどれくらいになるのか、目安を確認して献立や食事の考案に使う場合、文部科学省から提供されている日本食品標準成分表を用いて計算をする。

収穫時期や産地で変る

 実のところ、農水産物は収穫時期や品種、栽培方法、国内外の生産地域によってエネルギー量などは変るので、その数値を特定するのは少し面倒な作業だ。新緑の季節には「目に青葉」とうたわれるカツオが旬だ。春にとれるカツオは可食100グラムあたり114キロカロリーだが、戻りカツオと呼ばれる秋のカツオは脂が乗っていて165キロカロリー。同じカツオでも季節により50%近いエネルギーの差が生じる。
 同じエネルギーの一皿にするなら、重量を調整し調理法や付け合わせで満足感や見た目のボリュームを工夫することも必要だ。
 エネルギーはさほど違わないのに含まれる栄養素に差がでる魚もある。例えば弁当やおにぎりで人気のサケ・マス類。カラフトマス、シロサケ、ベニサケのエネルギーは可食100グラムあたりそれぞれ154、133,138キロカロリー。それが、骨粗しょう症予防や成長に欠かせないカルシウムの吸収と代謝を促すビタミンDはそれぞれ22、32、33マイクログラムとなり、差が大きくなる。
 食材の知識を深め、成長や保健予防に必要な栄養素をしっかりととりたいものだ。
(食卓プロデューサー)
日本経済新聞 2013年6月1日朝刊


ヘルスこの一手
荒牧 麻子 「高齢期の食事バランス」

 花冷えの夜、電話の向うから頼りなげな声が聞こえてきた。何かへの勧誘でわないかと一瞬緊張したが、随分前に食事のアドバイスをしたことのある旧知の経営者からとわかり、気を取り直してゆっくりと話を聞いた。
 数年前に会社の経営を息子さんにバトンタッチされ、会長職ではあるが、自由な時間がとれるようになったと以前に聞いていた。その後、自宅近くのスポーツクラブに入会し、何十年ぶりかに運動らしいことを再開したそうだ。会社へは車を運転して出かけていたが、それも休止。外出は混雑する時間帯を避け、歩数計を身に付けて電車と徒歩で過ごしていると日々の成果を誇らしげに伝えてきてくれていた。それが、今回の電話はそうしたはつらつさが伝わってこなかった。

おやつも大事な栄養源

 ぽつりぽつりと話し始めた内容は、80歳を迎えた昨秋あたりから、どうも体に力が入らないし食欲もいまひとつで、何を食べても美味しく感じない上、体重が6キロも減ったという悩みだった。
 血圧が少し高いといったことのほかは特段の疾患はないのだが、何かの病気ではと心配になり、消化器内科、循環器科、脳神経外科など思いつくままに外来を受診した。結果、それぞれに処方された薬が幾袋にもなり「食事の後や、日に何度か指定さてた時に服用するのが忙しい」とぼやいてもいた。食欲の低下はクスリとも関連しているのかもしれないと感じた。
 さて、高齢者の食事摂取基準は70歳以上をひとくくりとして記載されていて、新たな指針が待たれるところだ。大事なことは、高齢であっても動物性と植物性両方のたんぱく質源をしっかりと食事でとることである。もちろん、一度にたくさんは食べられないこともある。そんなときは、おやつが大事な栄養源としての役割を果たす。
会長氏には、好物の麺類に温泉卵や卵焼きを添えることも提案した。また、午後にはおやつを食べる習慣も新たに考えていただくことにした。「甘い物はいけないと思っていました」と心配するので、フルーツゼリーやプリンなどスルッと食べやすいものを勧めてみた。また牛乳の半分を飲むタイプの発酵乳に変えてみることも試してほしいと伝え、ひと月後に様子を聞くことにした。
(食卓プロデューサー)
日本経済新聞 2013年4月6日朝刊


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荒牧 麻子 「食生活の管理」

  朝食は無し、午後1時頃ごはんに卵、めんたいこ、鶏のいため物、午後10時にバイト先でまかないのパスタ。これが昨日の食事でしたと食事記録を持ってやって来た女子大生。以前、授業の後に、あと5キロ痩せたいのだがどうしたらいいか、と遠慮がちな様子で質問してきた学生だ。
 この手の相談に近い内容は、授業が終わって教室を後にしようという頃に寄せられるのが常。短い休み時間内に十分な応答ができないときは、次回までに食生活の様子をメモして持ってくるように伝えている。
 新学期が始まれば就職活動も本格化、体調をくずさないよう今まで以上に食生活に注意を払う必要があるだろう。  学生への食生活のアドバイスは、男女をとわずスポーツ栄養の本を参考にするよう勧めている。中高年にはカロリーガイド本が一番だが、まだ青年期の途上にいる彼らには、歩くことや家事などの生活の中で体を動かすことに加え、積極的な運動も取り入れてもらいたいからに墓ならない。そして何よりフットワークの軽さと容姿のカッコ良さを男女ともに重視する年ごろでもあるからだ。

果物、ナッツで栄養補給

 生活習慣病やメタボのしんぱいはまだ先だろうが、食事で体調を調え、持久力を付けて、授業やアルバイト、就職活動もこなせる体を作ってほしいと考えている。
 1日や2日の記録ですぐに判断はできないが、毎日ではないにしても朝食をとらず、アルバイトを終えて帰宅は深夜ともなれば、授業中に居眠りしたくもなるだろう。また低栄養とまではいかないにしても、風邪をひきやすい体になるのは否めない。
 体重を調整しながら日々ハツラツト過ごせる体をつくるためにとはいえ、忙しい学生に自炊を促すのもすぐには無理そうだ。そこでアルバイトの帰りにコンビニでミカンやキウイなどの果物と小袋入りのミックスナッツ、一口サイズのチーズやカップ入りヨーグルトなどを買い、不足しやすいビタミンCとミネラル、食物繊維の補給に備えるよう話した。
 持参した食事記録を眺めながらポツリと、昨日、今日の食事は明日、明後日の体と生活のためにとっているのだからね、というと、学生はハッとした顔をして、こらから図書館に行って本を探しますと出かけていった。
(食卓プロデューサー)
日本経済新聞 2013年3月16日朝刊


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平石 貴久 「薬物アレルギー」

 高熱や頭痛、風邪などの症状が辛い時に、市販薬を飲んで対処する人は多い。薬物は人類が発明し、発展させた素晴らしい科学だといえる。しかし、この薬物が時には本来の働きや効果効能とはまったく違う作用を起こすことがあり、命を脅かすこともある。
 薬物の副作用は、本来その薬物が持っている働きである薬理作用から推測できる反応と、通常の薬理作用から推測できないものがある。後者は投与された人の素因や素質によって反応が表れる「薬物アレルギー」で、免疫機能が崩れ、呼吸器が働かなくなるなど、その反応は非常に怖い。
 薬物アレルギーの反応は4つの型に分類される。T型はじんましんやアナフィラキシーショック、気管支ぜんそくなど、U型は溶血性貧血、血小板や白血球の減少など、V型は過敏性血管炎、血清病型反応など、W型は接触性皮膚炎、肝障害などだ。さらに反応が不鮮明な紅斑型皮疹や固定薬疹などがある。

何を服用したか報告を

 とりわけ重篤な皮膚粘膜眼症候群はスティーブンス・ジョンソン症候群や中毒性表皮壊死症などと呼ばれる。皮膚が真っ赤に腫れ上がって高熱を伴い、皮膚呼吸もできなくなり死に至ることがある。こうした皮膚症状を真菌症の合併そ勘違いする医師もいる。
 市販薬の風邪薬やドリンク剤などを飲んで、湿疹や発熱、かゆみや吐き気、全身のだるさなどの症状がどんどん増えたり、症状が悪化したりする場合は、医療機関で何をいつごろ服用したかを報告してほしい。特に初めて飲んだ薬物は多くの人が服用しているものでも必ず報告するのがよい。病院で処方された抗生剤や抗てんかん剤、去痰剤も安心できない。
 一般的には薬物アレルギーは、原因となる薬物の使用を中止し、かゆみ止めなどの対処療法をすると数日以内で改善する。状態によっては抗ヒスタミン剤やステロイドを投与することもある。
 症状が月単位で継続する場合は、食べ物の中に薬物と同じ物質が混入していることがある。例えば豚肉やミルクなどにまれに抗生物質が含まれていたり、パンや菓子に保存料も含まれていたりする場合がある。こうした薬物に対する過剰な反応は、幼児など敏感な子どもたちに多いが、大人にも起こる病気であり、注意が必要だ。
(東京ミッドタウンクリニック 特別外来医師)
日本経済新聞 2012年12月8日朝刊


ヘルスこの一手
荒牧 麻子 「魚の栄養素」

 年の瀬で華やぐ時期だが、進学のための受験や学年末試験を控えた学生さんには、風邪をひかないよう人込みは避け、うがい、手洗い、マスクの着用やいま一段の食生活への注意を喚起している。残り少ない授業で休めば、出席日数が足りず、慌てることにもなりかねないからだ。
 大学生の食事は学生食堂での様子や、食品メーカー、広告代理店のリポートなどで見聞きしている。以前から指摘されてきているのが、摂取食品数が少ないことだ。親元を離れて一人暮らしをする人も多く、食生活の管理にかける時間と費用は削りに削られているようだ。
 そこで、栄養のとり方と具体的な食事量を理解してもらうため、大学の授業で弁当をテーマに調理実習を組んでみた。自炊で料理の腕を鍛えた男子学生もいれば、家庭で全自動炊飯器を使っている女子学生は鍋でご飯を炊いたことが無いと言う。どうやら調理技術にも差がありそうだ。

ミネラル豊富、毎日摂取を

 弁当製作の実習には条件を設定した。一人前の食材費を300円以内に収めること、四人一組で1人一品おかずを考えて献立とし、材料の買い出しや準備を共同ですることなどだ。また実習に際して手を洗うことはもちろん、三角巾、エプロン、手拭いを用意することなどを伝えていたら、三角巾ってなんですかという質問や、エプロンを持っていないと手を上げる学生が続出し、食事作りの世代間ギャップも感じた。
 さて、実習で出来上った弁当を食べ、それぞれの献立紹介と掛かった経費の発表を聞いた後、授業を手伝ってくれた事務職員が「魚の班は一つもなかったですね」と小声でつぶやいた。
 学生の好きな、そして決められた予算の中で考案されたメニューは肉類と卵がメーンだった。野菜には注意が向けられていたようでピーマン、キャベツ、ゴボウ、ニンジン、タマネギなどが使われていた。
 授業の終わりに、魚と肉の栄養の違いについて触れた。魚は、日々欠かせないミネラルであるカルシウム、鉄、リン、ヨウ素、マンガン、セレン、マグネシウム、カリウム、銅、亜鉛、クロム、モリブデンそしてナトリウムを一度に多種とれるスグレモノであることを。親しみの無い栄養素が多いが、魚も肉類同様、毎日摂取したい食品である。
(食卓プロデューサー)
日本経済新聞 2012年12月15日朝刊


ヘルスこの一手
平石 貴久 「患者と医師の関係」

 日経新聞に紹介された写真集「ソローニュの森」を見て、フランスの精神医療の現場を知った。写真家田村尚子さんが何度も訪れてこの精神科病院の風景を記録した素晴らしい写真集だ。自然の中に立つシャトーで、患者をむやみに閉じこめず、患者と医師が垣根なく接していた。フランスは元々、精神医療や感染症治療などその時代をリードしてきた国だ。
 医師でありながら、いつも日本の医療はこれでいいのかと自責の念にかられている。小さな診療所であれ、都会の大病院であれ、血の通った医療をすべきだ。医学生になって最初に教わった言葉は「病を診ずして人を見よ」。病名にとらわれず、患者の背景や人となりを診なくてはいけないという意味だ。だが現実には、ただ治ればよいという考えが医しと患者の間にあることが多い。
 私は患者を親しい名前で呼ぶ。自分のことも話し、お互いの理解を深めようと時間を費やす。原因不明の発熱の患者が来院したとする。いろいろな検査を何度しても異常なし、せきも出ず痛みもないが発熱がある。昔は知恵熱だ、恋の悩みだと言って患者の心配を吹き飛ばし、やがて熱が治まった経験は何度もある。 

互いに理解と信頼を

 しかし、今はそんな対応では「いい加減」と言われてしまう。治す側も治される側も、一日も待てない時代になってしまった。もちろん医療は病気を治すことが第一の目的。ただそこには医師と患者との理解と信頼が欠かせない。それがよりよい治療につながり、医師にとっても力になる。患者に食欲があれば喜び、「おいしかった」といわれればこちらが満腹になる。「ぐっすり眠れた」の一言は疲れが吹っ飛ぶほどうれしい。「熱が下がりました」の一言で、全身の力が抜けるほど安堵感に浸る。
 自転車で田舎道を走って患者の家へ急ぐ父の姿が私の医療の原点だ。世界には素晴らしい病院がたくさんある。驚くほどの技術や、切れ味鋭い抗生剤もある。しかしそれらをいかすのは医者の技量だ。あなたの命を預けるにふさわしい医師と信頼を深めてほしい。風邪や軽い体調不良でも、今のあなたには重要な病気だし、今日一日の最大の悩みだ。どんな病気でも全力で対応してくれる主治医を見つけてほしい。
(東京ミッドタウンクリニック 特別外来医師)
日本経済新聞 2012年9月1日朝刊


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平石 貴久 「筋肉の修復」

 ハンマー投げ選手の室伏広治さんにであったのは、2000年のシドニー五輪1ヶ月前のこと。国内では無敵の室伏さんだったが五輪挑戦には程遠い身体能力だった。
 すぐ実施した血液検査では鉄欠乏性貧血を示した。スポーツ選手は全力を発揮するたびに筋繊維が切れる。運動後2時間ほどで再生が始まるので、材料のたんぱく質を補給する必要がある。タンパク質が届かないと筋肉は血液中の赤血球のタンパク質を利用してしまう。赤血球は鉄分を多く含むので結果的に体内の鉄分が失われ、全身に酸素を運ぶ赤血球の働きも弱くなり、持久力などが低下する。こうしてスポーツ選手特有の「スポーツ貧血」が起こる。
 サッカー、ラグビーや長距離走のような試合時間の長い種目や長時間のトレーニング時はスポーツ貧血になりやすい。さらに汗からも鉄分が失われ、体温の上昇も貧血を促す。タンパク質だけでなく、ビタミンB・Cと鉄分、とりわけ動物性食品に多く含まれ、吸収率の高いヘム鉄を摂取したい。

タンパク質、鉄分の補給を

 室伏さんは体重130キロ以上の選手が並ぶハンマー投げの世界で、100キロ未満と小さかった。筋力トレーニングで筋繊維を切ってはつなぐことを繰り返し、ようやく体重が100キロを超えたのは2004年のアテネ五輪の予選の朝だった。
 アメリカ留学中はステーキを500グラム以上、朝昼夕夜の一日4回食べて筋肉増強を図ったという。肉中心の食事は自然と貧血を治し、やがて彼の戦いは筋肉増強から年齢との戦いに変わった。目指したのは柔らかい筋肉を見につけること。それはスポーツ医学上、瞬発力を必要とする種目の選手として一つの賭けだったが、バランスのとれた回転から彼が放つハンマーの放物線はどの選手よりも美しかった。ロンドン五輪の銅メダルは、彼の競技人生の集大成になった。
 トップアスリートを目指す人は運動直後に体重1キロ当たり3グラム以上のプロテイン(タンパク質)を摂取するとともに、鉄分はスタミナ、カルシウムはスピードを生むことを認識し、摂ってほしい。柔らかく疲れにくい筋肉をつけることが、ケガの少ない鋭いプレーを生む原点だ。そうして歴史を作ってきた先人たちの姿を記憶にとどめたい。
(東京ミッドタウンクリニック 特別外来医師)
日本経済新聞 2012年8月18日朝刊


ヘルスこの一手
平石 貴久 「慢性腰痛の防止と対処」

 ようやく暖かくなり、運動するには最適な季節がやってきた。たくさんの人が待ち構えていたように散歩や山登り、スポーツを楽しんでいる。
 外来では腰痛や座骨神経痛を訴える患者が急に増えてきた。椎間板ヘルニアや変形性  など、大病ではないものの突然、腰の痛みに襲われたり、腰に手を当てないと立ち上がれないほどの痛みを感じたりする人も多い。冬に体を動かさなかった人がいきなり運動して、全身の筋肉が驚いたのだろう。
 通常、腰痛は安静と適切な治療で10日ほどで症状が軽くなり、長引いても3カ月以上はかからない。ただ、それ以上続くなら「慢性腰痛」だ。原因として背骨やその周辺の筋肉や神経の異常、内臓疾患などが考えられる。疲労や姿勢の悪さの場合もある。
 防止するには、家庭や職場での姿勢や動作に気をつけながら、簡単な腰痛体操やストレッチを行って積極的に体を動かすことが大切だ。

姿勢に注意、運動も有効

 例えば、痛みを起こしづらい姿勢を心がける。長時間立つ時は10センチメートルほどの台の上に片足をのせ、姿勢を時々変えるとよい。中腰や前かがみの姿勢も避ける。座る時は机に上体を近づけて、膝を直角に曲げ、足裏全体を床に付ける。背もたれは110度〜120度が理想といえる。
 特にものを持ち上げる時には膝を曲げて重心を低くし、高いところからものを取るには台を使う。ゆっくりした動作を意識して、体をひねる動きは避けることで、腰への負担を減らすことができる。
 また改善するには、運動療法が有効。なかでもウオーキングが最適だ。顔をしっかり上げて、軽くこぶしを作り、肘を90度に曲げて腕全体を大きく振る。お腹に力を入れて背筋を伸ばし、大きな歩調でかかとから着地する。うっすら汗をかき、会話が楽しめる程度の速さで歩くのが良いだろう。
 また、仕事や家事の合間に、体を左右に傾けたり、首の力を抜いてゆっくり上半身を前に倒すなど、ストレッチングを行うのも安全で効果的だ。
 一方で、消炎鎮痛剤や筋弛緩(しかん)剤を使用したり、抗不安剤で不安や落ち込み、緊張を取り除いたりする方法もある。症状に応じて、医師に相談して早めの治療と対策を始めることを勧める。
(東京ミッドタウンクリニック 特別外来医師)
日本経済新聞 2012年4月28日朝刊


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平石 貴久 「たかが風邪」は禁物

 今年の風邪はしつこい。たんを伴うせきや、咽頭痛のほか、インフルエンザのような高熱を出すこともある。下痢や吐き気ですっかり元気がなくなってしまう。
 風邪は鼻腔(びこう)や咽頭から気管支や肺までに起こる急性の炎症。原因の80〜90%はウイルス感染で、10〜20%は他の細菌や冷気、乾燥、室内のほこりなどが原因だ。粘膜は乾燥すると抵抗力が弱まり、さらにウイルスは乾燥や低温で力を増す。
 風邪症候群のうち、症状の軽い普通感冒には、鼻汁鼻水、鼻づまり、くしゃみ、頭痛、発熱、悪寒、関節痛、たんといった症状がある。
 また、インフルエンザによるものを流行性感冒ともいい、急な発熱、頭痛、腰痛、筋肉痛、全身の倦怠(けんたい)感が初期症状で、遅れてせきやたんなど呼吸器症状が出る。

風邪は肺炎の入り口と認識を

 風邪が気管支にまで及んだものを気管支炎、肺に炎症が達すると肺炎になる。呼吸音は荒く、高熱が何日も続き、せき、たん、呼吸困難、胸痛などの全身症状も強まる。食事も取れず、せきで体力を消耗し、抗生剤やステロイド剤を入れた点滴で治療しても高熱が続くと、危険な状態だ。
 最近、患者さんから肺炎ワクチンのことを聞かれる。2歳以上で医師が健康な状態と判断できると接種可能。免疫完成まで14日ほどかかる。一度接種すると5年ほどは肺炎にならないとされるが、肺炎には他の原因菌やウイルスの可能性もあり、やはりかからないように注意は必要だ。
 以前は一生に1度しか接種できないとされたが、最近は副作用も少なく、2度、3度の接種もかのうになったので、医師と相談してみてほしい。
 外出時はマスクを着用し、衣服は厚着に。部屋の掃除や外気の入れ替えもしっかり行い、寝室を加湿し、空気清浄器も利用しよう。体温計で体温を知ることも大切だ。インフルエンザの予防接種を今からでもしておく。とくに持病を持っている場合は、主治医の注意や指導を大切に守ろう。
 たかが風邪と侮ることなく、早く治療しよう。風邪は肺炎の入り口として扱うべきだ。病院に行けない場合も、街の薬局で、薬剤師に相談し、大衆薬で、まずは早めに治療することを勧める。
(東京ミッドタウンクリニック 特別外来医師)
日本経済新聞 2012年2月11日朝刊


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平石 貴久 ヘルペス感染症広がる

 最近、「帯状疱疹(ほうしん)」などヘルペス感染症の患者さんが増えている。ヘルペス感染症は、水痘・帯状疱疹ウイルス(VZウイルス)によるもので、侵入経路は鼻や口から上気道または消化管へと入り、血液を経て神経や上皮に達すると考えられる。
 「水痘(水ぼうそう)」は潜伏期間が14日程度。軽い発熱から始まり、口の中の粘膜に湿疹ができることもある。小さな水疱(すいほう、水ぶくれ)の中心部は凹み、やがて痂皮(かひ、かさぶた)などができて7日以内に治ることが多い。舌や口唇粘膜にできることもある。
 「帯状疱疹」は、脊髄とその神経の支配する領域に帯状に発疹が広がることから、こう呼ばれ、眠れないほど激しい痛みも伴う。内蔵にも罹患(りかん)する。潜伏期間は7〜14日。紅斑(淡紅色の発疹)で始まり、丘疹(盛り上がった発疹)・小水疱・出血性の小膿疱(のうほう、うみがたまった水ぶくれ)・痂皮へと変化して2〜3週間で治癒する。

完全に治さないと再発

 高齢者は神経痛が数カ月以上続くこともあり、発疹の場所によっては腕が上がらなくなったり、呼吸しづらくなったりすることもある。発疹の治療はもちろん、痛みに関してもしっかり治す必要がある。VZウイルスの初感染で水痘を発症し、一端治った後、何年も経ってから帯状疱疹となって再発することもある。
 発疹の局所には「石炭酸亜鉛華リニメント」と呼ばれる塗り薬を丁寧に何度も塗って、神経痛を伴う場合は、消炎鎮痛剤を内服したほうがよい。抗ヘルペスウイルス剤は日に3回とか5回とか指示通りに、きちっと服用することを薦める。ひどい水疱や痛みを伴う場合は早めに点滴治療すると治癒を早める。
 大切なことは、早期の診断と治療。さらに、しっかり治さないとすぐに再発したり、痛みが残ったりしてしまう。胸の帯状疱疹は、発疹が出ると比較的診断しやすいが、潜伏期には痛みを繰り返し、肋間(ろっかん)神経痛や狭心症と間違って必要以上に心配する人もいる。
 医師は、小さな紅斑でも、帯状疱疹の多くの病気の可能性を見捨てないように注意する。患者さんはカロリーの高い食事を取りながら、体力を回復して治しましょう。
(東京ミッドタウンクリニック 特別外来医師)
日本経済新聞 2012年1月21日朝刊


ヘルスこの一手
荒牧 麻子 社員食堂の献立

 体重計や体組成計を製造する会社、タニタの社員食堂人気メニューを書籍として売り出したら、シリーズ累計で400万部を越える勢いになったという。
 書籍離れが危惧される中、実用書として見事な成績である。内容は、全体の1割ほどのページで食堂を利用した社員の体験談や薄味でも満足感や満腹感が得られる献立作りの極意が紹介され、残りはカラー写真に収められた定食と単品料理のレシピの掲載に当てられている。  人気に後押しされるかのように、今後はそのメニューを実際に食べられるレストランが都心のオフィス街に登場したという。
 社員食堂は福利厚生施設としてスタートした。そこには栄養士や管理栄養士が勤務し、衛生管理はもとより、食生活で体重管理や体調を整えようとする人のために大きな役割を果たしている。  献立は科学的裏付けに基づいて作られていて、早ければ数日で効果が表れる。さらに確かな手ごたえを期待するなら、数週間利用することを薦める。
 1日に必要なエネルギーは世代、性別、体格、運動量などによって個人差はあるが、大人の場合、現在の体重(キログラム)を30倍した数値がひとつの目安だ。体重70キログラムであればふだんは2100キロカロリー前後で飲食を考えれば良い。

新たな日常食の参考に

 一方、減量や中性脂肪・コレステロールなどを調整しようとする人は、体重を25倍した数値を1〜2カ月続けてみるのも一策だ。70キログラムの人は1日1750キロカロリーとなる。
 この数値で飲料と食事、時には甘いものなども取る事を想定すると、1食500〜600キロカロリーの食事は、エネルギーの目安を身体に覚えさせるのに都合の良い量に思える。
 さらに、1食に、あるいは1日の食事に適量の野菜を盛り込み、味付けの中心である塩分を程よく利用することも健康を確かなものとするためのキーポイントとなる。
 現在推奨されている成人の1日当たり食塩摂取量は、男性9グラム未満、女性7.5グラム未満。1食3グラム以内が望まれる。
 先程の社員食堂のメニュー集には1食500キロカロリーを軸に、塩分3グラム前後、野菜を使用した料理が2皿付く基本パターンの例がたくさんある。新たな時代の日常食として参考になるだろう。 (食卓プロ中ーサー)
日本経済新聞 2012年1月14日朝刊


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