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幼稚園児と小中学生
ぜんそく10年で倍
文科省まとめ・今年度、過去最高に
大気汚染のせい?子供の体質変化?
 ぜんそくにかかっている幼稚園児と小中学生の割合が今年度、過去最高を更新したことが21日、文部科学省がまとめた学校保健統計調査(速報)で分かった。10年前と比べ、幼稚園・小中高校いずれも2倍以上に増えた。同省は「大気汚染や室内環境の変化などが指摘されるが、ほかにも様々な影響が考えられ原因の特定は困難」としている。
 ぜんそくの割合は幼稚園が2.3%、小学校が3.7%、中学校が2.9%でそれぞれ前年度比0.8ポイント、0.5ポイント、0.3ポイント上昇。特に幼稚園は前年度比(1.5%)の1.5倍に増えた。高校は1.6%で微減だった。
 調査を始めた1967年度以降、ぜんそくの園児・児童・生徒数は右肩上がりの傾向にある。10年前のぜんそくの割合は幼稚園1.0&、小学校1.5&、中学校1.4%、高校0.8%だった。
 文科省は増加の要因として、大気や室内環境のほか、子供の体質の変化などを挙げ、「ぜんそくの診断ができる医療機関が増えたことで、学校が把握するケースが増えた可能性もある」(調査企画課)としている。
 調査は全国の幼稚園・小中高校の園児・児童・生徒から学校単位で22.5%を抽出して4―6月に実施した。
 文科省は、ぜんそく、アトピー性皮膚炎など子どものアレルギー疾患の罹患(りかん)状況を知るため、児童・生徒全員を対象にした初の全国調査を行っており、今年度内に結果を公表する。
原因解明まだ
 国立成育医療センター総合診療部の赤沢晃医長の話
 ぜんそくなどアレルギー疾患の子どもが増えているが、理由は未解明の部分が多い。住環境や食生活の変化で子どもがダニやペットなどのアレルギー原因物質にさらされやすい環境になっているとの説があるほか、幼少期に感染症にかかる機会が減り、免疫系の働きに変化が生じたとする説もある。
日本経済新聞 2006年12月22日朝刊

ぜんそく自己管理「不良」患者
8割「管理できた」と誤認

相模原病院など調査
認識と実態にずれ

 薬などによるぜんそく症状の自己管理が「不良」と判定された患者の8割以上が、自分では「管理できた」と誤った判断をしていることが、国立病院機構相模原病院などの調査で分かった。日本は年に3000人以上がぜんそくで死亡し、死亡率も先進国の中で高水準だ。同病院の秋山一男・臨床研究センター長は「ぜんそく死をなくすには適切な自己管理が必要」としている。
 調査は今年2月、過去1年にぜんそく治療を受けた全国の成人約700人を対象に実施。電子メールで治療内容や管理状態の自己評価などを尋ねた。管理状態は過去4週間の薬の使用頻度や仕事への影響など5項目の質問から「完全」「良好」「不良」に区分するぜんそくコントロールテスト(ACT)で判定した。
 ACTの判定で管理状態が「完全」だった患者は19.6%(138人)で、「良好」は44.5%(313人)、「不良」は35.8%(252人)だった。
 「不良」と判定された患者の自己評価のうち、最も多かったのは「ある程度コントロールできた」の57.5%。「よくできた」の22.6%、{完全」と答えた6.0%と合わせて86.1%が管理できていると考えていた。「ほとんどできなかった」「まったくできなかった」と回答したのはそれぞれ13.1%と0.8%にすぎず、患者の認識と実際の状態に大きなずれがある実態が判明した。
 秋山センター長は「慣れなどで自分の状態を軽く考えがちな患者は少なくないが、急に症状が悪化し死に至るケースもある」と指摘。「ぜんそく死の予防には、状態を正しく把握し適切に自己管理することが不可欠。ACTを使って患者が自分の状態を確認するのも有効」としている。
 厚生労働省によると、2005年にぜんそくで死亡したのは3198人で減少傾向。ただ患者10万人当たりの死亡数は日本が8.7人で、カナダの1.6人、英国の3.2人など先進国と比べ数倍に達する。
 同省は今年度から「ぜんそく死ゼロ作戦」を開始し、患者が呼吸機能を測定して状態を把握したり、吸入ステロイドなどの長期管理薬を使うことを定めた診療ガイドラインの普及を進めている。
 ACTの質問表はhttp://zensoku.jp/に掲載されている。
日本経済新聞 2006年12月6日夕刊

高齢者に多い肺病COPD
原因はタバコとビタミンC不足
都老人研など研究チーム確認
 東京都老人総合研究所と順天堂大学の研究チームは13日、高齢者に多い肺の病気「慢性閉塞(へいそく)性肺疾患(COPD)が、ビタミンC不足と喫煙で起ると、発表した。これまででもたばこの吸いすぎが原因の一つと考えられていたが、ネズミの実験で確認したのは初めて。
 COPDは初期のころは息苦しさが目立ち、進行すると呼吸困難となって死に至る。患者が急増しており、今回の実験結果は予防法の確立に役立ちそうだ。
 老人研の石神昭人主任研究員と順大医学部の瀬山邦明助教授らのチームの成果で、米国胸部疾患学会雑誌に報告した。
 ネズミは本来ビタミンCを体内で作れるが、研究チームはビタミンCを作れないようにしたネズミに、たばこの煙を吸わせた。肺を調べたところ、約二ヶ月でCOPDを発症した。煙を吸わせなかったネズミは六ヶ月で発症した。  最近、ビタミンC不足が老化を加速させる要因の一つになることがわかってきている。ビタミンCを作れなくしたネズミも、肺胞が大きくなる老化現象を確認した。ネズミはさらに喫煙するころで肺胞が急速に壊され、COPDに進行したという。石神主任研究員は「ビタミンCの摂取や喫煙が予防につながる可能性が高い」と話している。
 COPDは世界では死因の第四位で、日本の患者数は21万人程度といわれている。日本では最近40歳ぐらいで発症するケースが増えており、潜在的な患者数は500万人を越えると考えられている。
日本経済新聞 2006年9月14日朝刊

病と生きる
喘息と向き合う
厳しい鍛練、発作を防ぐ
スケート選手 清水 宏保さん

 長野五輪のスピI日スケートの金メダリストは、喘息(ぜんそく)と“つきあって”いる。スケート靴は三歳から履いている。喘息の発作が出始めたのはそのころからだが、小学生の時に発作がひどくなり入院して初めて「喘息ですよ」と告げられた。以来、ずっと……である。
 「スケートをやると体調がいいんです。肺が鍛えられるからでしょう」と話す。文字通りスケートと二人三脚でやってきたが、同時に喘息とも二人三脚であった。
 高校生のころまでは「喘息の薬はこどもの体に悪い」という両親の思いもあってか、薬は使っていなかった。発作を起こさないよう体を鍛えるため、毎朝走りこみもした。今か ら考えればむちゃな“治療法”だったが、「何クソ」という気持ちで乗り切った。現在は薬で発作はうまくコントロールできているという。
           ◇ ◇ ◆
 背丈は162センチとやや小柄である。それに何よりも、肺活量が約2700CCと男としては少ない。加えて喘息である。
 スピードスケートをするには少しきついのでは?
 「肺活量が少ないことや喘息をハンディと思うかどうかは気の持ちようですね。それらを素直に受げ入れて上手につきあっていくことが何よりも大切です。不利に思うことはありません」ときっぱり。
 「筋肉と同じように肺も鍛えることができる」と付け加える。そうした思いが苦しいトレーニングを乗り越え、喘息の発作を防いできた。
 大学時代からほぼ毎日、吸入ステロイドを使っている。もし、競技期間中に発作がでたら「それまでの練習が無駄になるし、へたをすればその競技シーズンがパーになる」からである。自分のことをよく考えてくれる主治医のすすめもあり、朝起きた時と寝る前の二回、口から吸うだけでよい。ハンディだから海外遠征にも持って行く。
 スポーツ競技にはドーピング検査がつきも鞄驚ある。禁止された薬物を使っていないかどうか厳しく管理されているのである。喘息薬には禁止成分が含まれている場合がある。競技シーズンにはいる時や大会前には使用している薬をとどけている。
「薬を使っているおかげか、知識は豊富になりまして……と笑う。
           ◇ ◇ ◆
 ハウスダスト(家の中のほこり)が喘息の原因になるから、いつも部屋をきれいにしている。加えて、呼吸器をいためないようにしている。だから、一年中、風邪をひかないよ うに気を使っている。
 とくに冬場には、練習が終わったらシャワーを浴びて体を温めるほか、移動の際はマスクをしマフラーを離さない。うがい中手洗いを励行することはもちろんである。こうした精進と薬によって、今では発作らしい発作は出ていないという。
 喘患と向き合っていくにはまず相手のことを知らなければならない。「私の揚合、大学で生理学や解剖学を学んだことが大きく役立った」という。加えて「自分の体をよく知って、自分なりに発作を紛える工夫をすることも大切」と説く。
(編集委員 中村雅美)
しみず・ひろやす 1974年北海道生まれ。小さいころからスケートを始め、短距離スピードスケートの第一人者として、世界のけん引役になっている。世界新記録など多くの記録をもっている。32歳。
日本経済新聞 2006年6月15日夕刊

安心の住い図
室内の空気、食物と同様の気配り必要
 人間が一日に取り入れる空気の量は15―20立方メートル程度である。天井高が2.5メートルの四畳半から六畳程度の体積である。大したことはないように思えるが、実は空気は重たい。1立方メートルの空気は1.2キログラムの重さがあるのだ。従って一日に吸う空気は重さにして20―25キログラムにもなる。
 一方、現代人は一日の90%以上を住宅、建築物、車や電車の中など室内で過ごしている。外にいる時間は案外と少ない。すなわち、体に取り入れる空気はほとんどが室内空気なのである。これに対して、人間が一日に体内に取り入れる食料および飲み水は、数キログラム程度。信じられないかもしれないが、食べ物や飲み水よりも、はるかに多くの空気を体に取り入れている。
 日本はかつて水が美味しく、海外の硬水地域のように飲料水を買うなどということは考えられなかったが、ごく普通に水を買うようになった。無農薬野菜や有機野菜などをわざわざ地方から取り寄せて食卓に並べる人も珍しくなくなった。ところが同じ身体に入れるものでも、空気に関してはまだまだ関心が低い。
 室内空気の質は、アレルギー、シックハウス症候群、喘息、アトピー、過敏症など現代の病に大きくかかわっている。世界保健機構(WHO)欧州事務局が2000年に「健康的な室内空気への権利」と題した憲章を発表しているほどである。食物や飲料には安全性に気を配るようになったが、室内空気に関しても同様の安全・安心が欲しい。
 今年は少なかったスギ花粉は、屋外から持ち込む量を少なくすることで症状が改善するが、室内で発生する汚染物質もある。現在では、多くの新建材が登場し、多くの新しい化学物質が使用されている。カーテンや家電機器の中にもにおいなどが強いものがある。人間に快適な住宅はカビやダニにも住みやすい。それではどのように生活すれば良いのだろうか。家具や新しく購入した製品は、数日間風通しをするとよい。また、普段から換気をして、おいしい水を飲むように室内の空気も味わいたい。
(早稲田大学教授 田辺 新一)
日本経済新聞 2006年4月8日朝刊

体のシグナル
息切れ
肺気腫、最大の原因は喫煙
 文筆業のEさん(55)は若いころからの喫煙家。一日に2〜3箱は吸う。締め切りに追われ徹夜のときはさらに増える。
 それが最近、坂道を歩くと息が切れ、急ぐとせき込むようになった。長い階段を上がるときは一休みしないと苦しい。汚いタンも増えた。かかりつけ医に相談し、聴診と呼吸機能検査を受けたら肺気腫と診断された。
肺は肺胞と呼ぶ小さな空気の入った袋がブドウの房のように連なっている。そこで酸素と二酸化炭素を交換する。肺気腫とは肺胞がつぶれて風船が伸び切ったようになり息ができなくなる病気だ。
 治すのが難しいので、肺気腫にならないことが一番大切だ。ただ、この病気は症状が出にくい。息切れ、せき、タン、やせ、ビール樽のような胸――などの症状が現れたら相当進行しており、要注意。
 風邪やインフルエンザにかかりやすく、重症になりやすい。最大の原因は喫煙で、受動喫煙も危険だ。ほかにも体質、大気汚染、チリやホコリ、化学物質が関係する「肺の生活習慣病」だ。
 治療は、禁煙はもちろん、呼吸の自律訓練と呼吸リハビリテーション。必要に応じ気管支を広げる薬やステロイドを吸入し、タンを切る薬を飲む。進行すると酸素を吸いながらの生活になる。
 Eさんは幸い肺気腫の程度はそれほど重くなかった。禁煙、生活習慣の見直し、気管支拡張剤の吸入、腹式呼吸や呼吸リハビリテーションに取り組み、症状は治まった。
(大阪大学大学院医学系研究科助教授 西田 俊朗)
日本経済新聞 2006年2月28日夕刊

検査値ここに注目
インフルエンザ
Q 大学受験を控えている高校生をもつ母親です。インフルエンザが心配ですが、検査で簡単に診断できますか。
A 従来はインフルエンザを診断できる簡便な検査はなく、発熱や頭痛、咳(せき)、筋肉痛や関節痛などの自覚症状と、流行状況から診断していました。しかし現在は、インフルエンザウイルスに感染しているかどうかは簡単に検査できます。
 インフルエンザウイルスは気道に感染し、鼻腔(びくう)粘膜や咽頭(いんとう)などで増殖します。そこで、綿棒を鼻腔の奥に差し入れて粘液を採取し、専用の検査試薬を使ってその中にウイルスがいるかどうかを確認します。
 この検査では、感染しているかどうかだけではなく、A型ウイルスなのかB型ウイルスなのか、ウイルスのタイプも同時に判定できます。
 もしもウイルスに感染していることが判明した場合には、ウイルスがまだそれほど増えていない発症後48時間以内に治療薬を服用すると効果があります。
(東京医科歯科大学教授 奈良 信雄)
日本経済新聞 2006年1月31日夕刊

ぜんそく死ゼロへ対策
厚労省「患者カード」を作製
ぜんそくによる死亡を減らそうと、厚生労働省は来年度、「ぜんそく死ゼロ作戦」と名付けた総合対策に乗り出す。治療に必要な情報を記したカードを患者に携帯してもらい、医師との間で情報を共有。また、地域の掛かり付け医と救急病院との連携を強化し、診療水準の向上を目指す。
15の都道府県で2年間のモデル事業を実施。5年間かけて全国で体制整備を図る。
ぜんそく死は、アレルギー関連の死亡の99%を占める。医療の進歩に伴い減少してきたものの、年間3000人台と依然多い状況。悪化や死亡を防ぐためには、患者自身が通院や服薬をきちんと行う自己管理が重要だ。
 「患者カード」には、住所・氏名のほか、掛かり付け病院名や治療内容、合併症、禁忌薬剤――などを記載。救急搬送先で役立つだけでなく、患者自身に自己管理を意識してもらう狙いもある。
日本経済新聞 2006年1月5日夕刊

薬のABC
インフルエンザ治療薬
 インフルエンザはインフルエンザウイルスの感染によって発症する。感染は咳(咳)やくしゃみなどで飛散したウイルスを吸い込むことで起きる。初冬から春にかけて流行する。予防にはワクチンの注射が最も効果的だ。
 治療には抗ウイルス薬だけが有効で、通常の風邪薬や抗生物質はウイルスには効かない。パーキンソン病治療薬として開発されたシンメトレル(アマンタジン)は内服するとA型ウイルスに効く。リレンザ(ザナミビル)はウイルスの増殖、伝播(でんぱ)に働くノイラミニダーゼの機能を防げ、A型、B型に効く。これは吸入して使用する。
 タミフル(オセルタミビル)もリレンザと同じ機能をもち、両型に有効だ。ただ、(1)安易な使用を避ける(2)症状を見極めて48時間以内に使用する―ことが必要。医師の処方が必要だ。
(千葉大学名誉教授 山崎 幹夫)
日本経済新聞 2005年12月20日夕刊

風邪、水うがいで4割予防…京大が証明
うがい薬効果確認できず
 京都大学保健管理センターの川村孝所長らのグループは28日、水でうがいすると、しない場合に比べ風邪の発症が4割減ることが分かったと米国予防医学学会の機関誌の最新号に発表した。うがいの効果を科学的に調査したのは初めてという。ただ、殺菌作用のあるうがい薬(ヨード液)の予防効果は確認できなかった。
 全国約390人の健康な人を対象に「うがいをしない」「水でうがいをする」「うがい薬でうがいをする」の3グループに分け、2002年暮れから03年にかけての冬に風邪を引くかどうか調査した。うがいの回数は1日3回以上で、インフルエンザ患者は除いた。
 うがいをしないと、1ヶ月当たり100人換算で26人が発症するが、水でうがいをすると同17人だった。統計データのばらつきをそろえると、水のうがいで風邪の発症が4割減になる計算という。一方、うがい薬は同24人が発症し、うがいをしない場合と大差がなかった。川村教授は「水のうがいで風邪は十分予防できる」と話している。
 一連の研究では、風邪を発症した後、解熱鎮痛薬を服用すると風邪の治りが遅くなる可能性があるとの結果も出た。
日本経済新聞 2005年10月29日朝刊

薬のABC
薬と遺伝子
人によって効き方左右

 同量の薬を飲んでも、効く人と効かない人がいる。酒を飲んで酔う人と酔わない人がいるのと同じだ。
 薬は体内に入ると酵素の働きによって代謝(分解)さら、体外に排出される。酵素をつくる遺伝子が欠損している人の場合、薬はいつまでも体内にとどまって毒性が現れることがわる。例えば抗ヒスタミン薬の場合、「CYP2D6」という薬物代謝酵素によって分解解毒されるが、日本人の約1%ではこの酵素をつくる遺伝子が欠損しているという。
 最近、北海道大学薬学部が興味深い実験結果を発表した。たばこの煙に含まれるニトロソアミンを活性化して肺がんの原因物質に変える「CYP2A6」という酵素が欠損している人では、たばこを吸っても肺がんになりにくいという内容だ。
一人ひとりの遺伝子情報によって薬の飲み方を決める時代は近いかもしれない。
(千葉大学名誉教授 山崎 幹夫)
日本経済新聞 2005年10月18日夕刊

医食同源
ニラとビタミンB1で疲労回復
 ニラは中国では起陽草といわれ、スタミナのつく緑黄色野菜とされているが、ニラだけを食べてもスタミナ効果は得られない。NHKテレビの「ためしてガッテン」(今年7月放映)によると、6人の男性を2群に分け、1群にはニラとおにぎりを食べてもらい、もう1群にはモヤシとおにぎりをたべてもらい、3時間自転車をこいでもらった結果、ニラ群は、モヤシ群に比べて特にスタミナ効果は得られなかった。
 しかし、ニラとビタミンB1の粉末を一緒にとったところ、疲労回復の度合いが大きく伸びた。それはビタミンB1は炭水化物(おにぎりなど)を代謝するのに必要なもので、これが不足すると疲労や夏バテが起りやすいからだ。
 さらにニラに含まれている含硫化合物アリシンはビタミンB1とくっついてアリチアミンになり、ビタミンB1の旧収率を高め、さらに体内に長く停留するので、スタミナが出ると考えられている。こういうと、ニラと一緒にビタミンB1の粉末でもとったらと思うだろうが、これでは食べる楽しみは得られないし栄養のバランスがとれない。
 そこでニラ入りギョーザガお勧め。これだけでタンパク質、脂肪、炭水化物、ビタミン、ミネラル、食物繊維が取れる。作り方はビタミンB1が豊富な豚ひき肉と同量のみじん切りにしたニラを用意し、すりおろしたショウガ、塩、こしょう、しょうゆ、ごま油を加え、よく混ぜ合わせ、ギョーザの皮で包み、焼いたり、ゆでたりし、ラー油を加えた酢じょうゆで食べるとさっぱりとおいしくたくさんとれ、疲労回復、夏バテ防止になる。
(新宿医院院長 新居裕久)
日本経済新聞 2005年8月27日朝刊

なるほど予防学
紫外線とがん、功罪の検証必要
 紫外線はシミやシワの原因だけでなく、皮膚細胞の遺伝子を傷つけ、皮膚がんを引き起こす。傷ついた遺伝子は体内の修復機構が働き自然に治るが、年とともにこの働きは弱くなる。色素性乾皮症の患者は遺伝子的にこの機能が弱く、皮膚がんが高率に発生する。日光には当たりすぎないほうが良い。
 しかし、昔から日照量の少ない高緯度地域ほど、がんの死亡率が高くなるという報告があった。国内でも、九州大の溝上哲也・助教授が、47都道府県の1961年から90年の平均日照量と、2000年のがん死亡率との相関を調べ、最近、専門誌に発表した。日照量が多い地域ほど、大腸がんをはじめとした消化器系がんの死亡率が少なかった。  紫外線にあたると、皮膚の細胞でビタミンDが作られる。ビタミンDは、魚、卵など食品からも摂取できるが、白人の場合、皮膚がピンク色になる程度に太陽を浴びると、普段の食事摂取量の約100倍合成されるという。
ビタミンDは、骨の健康維持には欠かせない。肝臓や腎臓で活性化されると、がん細胞の増殖を抑制して、正常細胞への分化を誘導する働きや、浸潤や転移を抑制する作用も知られている。
 動物実験や試験官内実験でも、がん細胞の発生・進展に対する抑制効果が多数報告されている。人を対象とした疫学研究でも、血液中の活性型ビタミンDの濃度が高いほど、大腸がんのリスクが低いことを示す多くの報告がある。
 ビタミンDが大腸がんを予防する可能性は高い。国内の研究で日照量の多い地域で大腸がん死亡率が低いことが示された以上、日本人で、紫外線とがんとの関連性を検証する必要がある。
 日本人の肌はメラニンによる色素沈着があり、白人よりも紫外線による影響を受けにくい。皮膚細胞が遺伝子損傷から守られるが、ビタミンDが合成されにくいことにもなる。日本人は、どの程度の日光にあたるのがよいのか。リスク(危険)とベネフィット(利点)を総合的に評価しなければならない。
(国立がんセンター予防研究部長 津金 昌一郎)
日本経済新聞 2005年8月21日朝刊

1分間人間ドック
高い尿酸値、動脈硬化注意
 放っておくと痛風になる高尿酸血症の患者は、国内に推定400万〜600万人。動脈硬化や心筋梗塞(こうそく)を発症しやすいことが最近わかってきた。内蔵脂肪を減らすことが治療の第一歩だ。
 尿酸は食べ物のプリン体が分解されてできる老廃物。血液100ミリリットルあたり7ミリグラムを越えると、高尿酸血症と診断される。自覚症状はなく、この状態が続くと関節などに尿酸の血症がたまってしまい、激しい痛みを伴う痛風になる。  痛風はよく効く薬があるため、それほど恐れる病気ではない。むしろ問題は、高尿酸血症が肥満や高血圧症、糖尿病と並ぶ動脈硬化の危険因子であることだ。
 内蔵脂肪がたまると尿酸値も上がる。大阪府立成人病センターの中島弘臨床検査科部長は、「痛風を心配する前に内臓脂肪がたまっている人は、減らすことが大切」と指摘する。
 内蔵脂肪が減っても尿酸値が高いままの人は、高プリン体食を慎み、アルコールも減らすこと。尿酸値が8ミリグラムを越えると、尿酸値を下げる薬物療法も選択肢となる。
●高尿酸血症の悪化を抑える生活習慣
・1日1〜2リットルの水かお茶を飲む(心・腎臓機能に問題がない場合)
・腹八分目に抑え、プリン体を多く含む食材に偏らない食事にする
 (毎日いくらや納豆を食べることを避ける)
・間食や夜食はやめる
・20〜30分継続できる歩行やジョギング、軽い水泳を1日1時間程度、
 週3回が目標
・お酒の飲み過ぎを避け、休肝日を設ける
 (1日の目安はビール大瓶1本、ワインボトル1/3)

日本経済新聞 2005年8月7日朝刊

なるほど予防学
塩分と胃がん
高濃度食品、特に危険

 塩分と高血圧との関連はよく知られている。世界保健磯関(WH0)は、高皿圧予防のために摂取量を一日当たり5グラム未満にすることを推奨する。ところが日本人の平均は、主に脳卒中予防対策の一環による減塩運動で、何年もかかってようやく11グラムにまで減った。
 食習慣の偏りはなかなか自覚しにくい。各国の食文化を比較すると、日本人は塩気の強いものが好きで、塩分摂取量も多い。それに関連してか、脳卒中と胃がんが多く、国内でも塩分環取量の多い地域ほど、概して、これらの病気の発生率が高い。
 日本の四地域に住む男女約4万人を対象に食習慣調査を実施、塩分揖取量と、その後約10年の胃がん発生率との関連を分析した。  まず、食塩摂取量ごとの胃がんリスクについては、男性では、最も多いグループで最も少ないグループの2倍になった。次に、高塩分濃度の食品5品目(漬物、みそ汁、干魚、タラコ・イクラなどの塩蔵魚卵、塩辛・練りウニなどの塩蔵魚介類)の摂取頻度別に調べてみた。
 男女共に、塩分濃度の特に高い、塩蔵魚卵や塩蔵魚介類については、ほとんど毎日たベるグループの胃がんリスクは、食べる回数が週一回未満のグループに比べ2−3倍高かった。
 高塩分濃度の食品の習慣的な摂取は、胃の粘膜を保護している粘液を破壊して、炎症を引き起こす。なめくじに塩をかけると溶けるのと似ている。このような状態では、ヘリコバクター・ピロリ菌という細菌の持続感染を招く。さらに、胃の慢性炎症により、胃がんになりやすい状況となる。
 高血圧予防の観点からすると、体の中に吸収されるナトリウム総量を抑えることが重要だが、胃がん予防だと「できるだげ塩分濃度の低いものを選ぶ」「回数を減らす」などの工夫が必要だ。
 胃がんは、日本だげでなく世界的に減少傾向にある。最大の功労者は、冷蔵庫を発明し、塩蔵保存の必要性を減らし、新鮮な野菜や果物を食卓にもたらした人たちであると考えられている。
(国立がんセンター予防研究部長  津金 昌一郎)
日本経済新聞 2005年7月31日朝刊

一分間人間ドック
爪の異常、重大疾患隠れる
 爪(つめ)の色や形がどうもおかしい―。指先の異常に気がついたら、肺がんや肝硬変など深刻な病気が隠れていることもあるから注意がいる。
 指先は毛細血管が集まる。特に爪は表面近くを血液が流れているため体の異常が表れやすい。全身にかかわる病気だと、手足すべての爪で同じ変化が出る傾向がある。
 健康な爪は、少しピンクがかって光沢があり、かろやかに湾曲している。色がすりガラスのように白くなると肝臓の病気や貧血、根本が白く先が赤褐色なら慢性腎不全、足だけ暗い赤色に変わったら糖尿病の疑いがある。
 肺がんや心疾患の患者は、指先が膨らみ爪の甲が丸く大きくなる「ばち指」になることも。爪に詳しい東皮フ科医院(大阪堺市)の東憂さ彦院長は「爪が向かい合うよう両手の親指同士をくっつける。すき間がない人は、一度医師に診てもらうのがよい」と指摘する。
 爪の老化は縦じわができる程度で、色や形の変化に気づいて精密検査を受けると体の異常が見つかることは少なくない。部分的に白く濁っただけなら、水虫や爪白癬(はくせん)の可能性が高い。
日本経済新聞 2005年6月26日朝刊

体のシグナル
目がかゆい
ヒノキの花粉症、ピークは遅め

 銀行員のFさん(35)はゴルフが趣味で、もう少しでシングルプレーヤーになる腕前。春先にコースへ出ると時々目がかゆくなる症状が以前からあったが、今年は4月に特にひどく、眼も充血した。
 車の運転がしにくくなったため、近くの眼科を受信したら花粉症と診断され、目薬を処方された。だが、五月にはいってからもかゆみは治まらず、大学病院に行った。血液検査の結果、ヒノキの花粉によるアレルギーと分かった。
 花粉症は、アレルギー性結膜炎の一種で、原因となる花粉はスギのほか、ヒノキ、カモガヤなどがあり、飛散する時期に応じて症状の表れる時期が異なる。2月から3月はスギ花粉が多く飛散し、ヒノキの花粉は少し後れて4月ころがピークとなる。
 アレルギーの症状は、眼のかゆみ、涙が出る、充血など。くしゃみ、鼻水などの鼻炎症状を伴うことも多い。抗原である花粉が結膜に接すると、ヒスタミンが放出され、かゆみの症状が表れる。
 軽症の場合は抗アレルギーの目薬で良くなるが、かゆみが強い場合は、副腎皮質ホルモンの目薬は、長期間使い続けると、眼圧が上がって緑内障になる場合があるので、注意が必要だ。また、最近は内服薬で眠たくならないで良く効くタイプも登場している。
 Fさんは、副腎皮質ホルモンの目薬と内服薬を併用してから、かゆみがとれて回復した。「おかげでゴルフのスコアが伸びた」といって喜んでいる。
(大阪大学医学部教授 不二門 尚)
日本経済新聞 2005年5月17日夕刊

なるほど予防学
コーヒーを飲む習慣ある人、肝ガンリスク低い
 二月中旬、米国の学術誌に「コーヒーをたくさん飲んでいる人ほど、肝ガンになりにくい」というわれわれの論文が掲載され、日米の多くのメディアにとりあげられた。
 全国各地の四十〜六十九歳の男女約九万人に生活習慣についてアンケートし、コーヒーの摂取量別にその後約十年間の肝ガンの発生率を比較した。疫学研究でも結果の信頼性が高いコホート研究とよばれる追跡調査である。
 コーヒーをほとんどの飲まない人たちに比べ、毎日一杯以上飲む人たちでは肝ガンリスクが半分になった。しかも量に応じた減少傾向が明確で、一日五杯以上飲む人たちではさらにリスクが半減した。
 コーヒーの肝ガン予防効果は動物実験で以前からも指摘されていた。学会発表などでも今回の研究成果のほかに複数のグループが、同じような結果を報告している。コーヒーをたくさん飲んでいる人は、肝ガンになりにくいということは間違いないだろう。
 ただ、これまでコーヒーを飲まない人が、たくさん飲むように生活習慣を変えたとして肝ガンを予防できるかは現段階では保証できない。そのような摂取量の変化をとらえたうえでの検討が、実施されたわけではないからだ。
 いったいコーヒーのどの成分がどう作用するのかもよくわからない。ただ、お茶も含めた他の飲料では効果がみられなかったことを考えると、共通するカフェインではない可能性が高い。コーヒーに含まれるクロロゲン酸という物質の抗酸化作用が、肝臓の炎症の増悪を抑えるという実験結果があるので、この物質が効いているのかもしれない。
 日本の肝ガンの九割はC型かB型肝炎の持続感染者から発生している。肝炎ウイルスに感染していない人は肝ガンにはならないと考えていい。予防の第一歩は、ウイルス検査で自分が肝ガンのハイリスクかどうか知ることだ。
 われわれの別の研究では、コーヒー大国ブラジルのサンパウロ在住日系一世の肝ガン死亡率が日本の半分以下であることもわかっている。
(国立がんセンター予防研究部長 津金 昌一郎)
日本経済新聞 2005年4月10日

からだのお話
細菌・ホコリは口から入る
鼻呼吸でシャットアウト

 テレビを見たり考えごとをしたり、何かに夢中になっている時、気がつくと口が半開きになっていないだろうか。もしそうだったら、要注意。鼻を使わず口で呼吸している証拠だ。免疫病を研究している西原克成博士は「花粉症、アトピー、ぜんそくなどアレルギーが原因の病気はすべて口呼吸が原因で引き起こされている」と警告する。
 ほ乳動物の中で口呼吸をするのは人間だけだ。人間も赤ちゃんは、鼻しか呼吸に使わない。口は食べ物、鼻は空気を取り込むのが本来の役割。だが、口を使って言葉を操るようになった人間だけが、口でも呼吸できるようになったらしい。「人間の体の構造的な欠陥です」と西原博士。
 鼻呼吸をしていれば、空気中に含まれる細菌やホコリは、まず鼻腔(くう)内の粘液と繊毛によって浄化される。さらに、だ液や口の奥のへんとう腺組織で作られる白血球などの働きなどによって、体内に侵入しようとする異物はシャットアウトされる。
 ところが、口呼吸だと、細菌やホコリにまみれた空気がへんとう腺を直撃。口をいつも開けているため口内は乾き、だ液の分泌も少なくなる。その結果、「口のへんとう腺が慢性的な感染を起こして、ばい菌の巣になってしまう」。これがアレルギー病の原因という。
 また、冷たい乾燥した空気では、肺に達しても酸素を取り込みにくいが、鼻を通して呼吸すれば、「空気に十分な温度、湿度を与えることができる。スキーのクロスカントリーで、選手の多くが鼻孔を拡げるテープを張って競技しているのはそのためだ。
 口呼吸を鼻呼吸に戻すにはどうしたらいいか。「まずは意識して口を閉じること。自然に鼻から空気を吸います」。鼻が詰まっていると難しいが、とにかく鼻をこまめに使って、本来の機能を取り戻してやることが大切。
 香りを楽しむアロマテラピーたガムをかむのも有効。口を閉じた状態をキープするマウスピースなども市販されている。(北川和徳)
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日本経済新聞 2005年3月2日夕刊

からだのお話
呼吸困難招く「タバコ病」COPD
徐々に進行、回復難しく

 愛煙家の後輩記者に「COPDを知ってるか」と聞いたら、「なんですか、それ」と返ってきた。COPD(慢性閉そく性肺疾患)とは別名タバコ病。あまり知られていないが、世界保健機関の統計では、現在の世界の死亡原因の4位にランクされる怖い病気だ。「患者の約9割は喫煙者。症状が進むと、呼吸困難に苦しみ、体を動かすこともつらくなる」と、昭和大学付属豊州病院の田中一正助教授は説明する。
 ほこりや大気汚染も原因にはなるが、喫煙の年数と量が多いほど発病する可能性が高い。以前は慢性気管支炎や肺気腫とも診断されていた。有害物質を長年吸い込んできたことが原因で、空気の通り道である気管支が炎症を起こし、肺の細胞が破壊され、呼吸機能が低下していく。
 アレルギー反応などで気管支が狭くなるぜんそくと症状が似ている。ぜんそくよりやっかいなのは、COPDは重症になると呼吸が苦しい状態が持続し、回復させる有効な治療法がないことだ。
 国内の患者数は20万人程度とされていたが、これは実際に治療を受けている人数。COPD疫学調査会が40歳以上の約2700人を対象にした調査では、なんと12人に1人がCOPDと判定された。多くが病気に気がついていなかった。このデータから推測すれば、患者数は500万人を越えることになる。
 セキやタンが慢性化し、長い時間をかけてゆっくりと症状が進行するため、「最初は風邪だと思って深刻に考えないケースがほとんど」と田中助教授。早期発見なら大事に至る前に進行を遅らせることができる。呼吸器科がある病院で肺機能を検査すれば、COPDかどうかすぐわかる。
 息を大きく吸って、一気に吐き出す簡単な検査。最初の1秒間で肺活量の70%以下しか吐けないようならCOPDの疑いがある。喫煙者で息苦しさなど気になる症状のある人は調べてもらった方がいいだろう。もちろん、COPDと診断されたら、即座に禁煙が必要だ。(北川和徳)
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日本経済新聞 2005年2月16日夕刊

からだのお話
健康は深く大きい呼吸から
呼吸筋ストレッチが効果

 昨年からの風邪が長引き、今もスッキリしない。せき込みながらインターネットのHPを閲覧していたら「呼吸筋ストレッチ体操」を発見した。息苦しさを感じているときに試すと、息が楽にできるようになるという。
 昭和大学付属豊洲病院の田中一正助教授らは、ぜんそくなど慢性呼吸器疾患に苦しむ人たちに同体操を指導している。呼吸の際、肺自体は膨らんだり、縮んだりするわけではない。肺を取り囲む筋肉が動くことで、空気が肺に出入りする。それらの筋肉をリラックスさせてやれば、深く、大きな呼吸が楽にできるというわけだ。
 「ぜんそくなどで負荷がかかると、呼吸筋は疲労して収縮し、脳からの指令に的確な反応をしなくなる。そのため呼吸困難を感じる。ストレッチして呼吸筋を健全な状態に戻してやるのです」
 具体的には、両手で胸を押さえたり、頭の後ろで両腕を上下しながら、ゆっくりと呼吸する。もちろん腹式呼吸、息は鼻から吸う。詳しいやり方は、環境再生保全機構(電話044-520-9567)が指導パンフレットなどを配布している。
 大量の酸素を必要とするスポーツ選手のトレーニングでも、呼吸筋に注目する動きがある。呼吸筋ストレッチ体操は健康づくりにも効果が高そうだ。最近、人気が高まっているパワーヨガやピラティスなどの呼吸法も、基本には正しい呼吸法がある。
 酸素なしで生きることはできない。体を動かすだけでなく、脳や心臓を働かせるエネルギーの生産に酸素は不可欠。その酸素を体内に取り入れる行為が呼吸。ほとんど無意識に行われる1日の呼吸回数は2万回に達する。「いい呼吸ができれば、からだに酸素が十分供給され、エネルギーの代謝もよくなって、健康で活力のある生活が送れるようになります」
 人間が生きていく根本の動作である呼吸。正しく呼吸が出来ているかを、普段から意識することが大切だ。
(北側和徳)
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日本経済新聞 2005年2月9日夕刊

体のシグナル
花粉症
薬服用、症状出る前が効果的
 Aさん(36)は数年前から春先のスギ花粉症に悩まされているが、仕事が忙しくて、なかなか病院に行く時間がない。初めのうちは症状が軽かったので我慢していたが、年ごとにひどくなって、くしゃみや鼻水でティッシュペーパーが手放せない。目もすごくかゆくなり、こすって目が真っ赤になる。
 そのうち、身体がだるく頭痛もするようになって仕事に支障が出るようになってきた。そこで、薬局で市販の花粉症の薬を買って飲んでみた。確かに症状は軽くなるが、眠気が強くなるため続けて飲めなかった。
 昨シーズンはとうとう我慢できなくなって近くの耳鼻咽喉(いんこう)科医院を受診した。眠気の少ない新しい花粉症の薬を出してもらって楽になったAさんは医師から「次回は症状が出る前から薬を飲んだほうがいいですよ」とアドバイスを受けた。
 これは花粉症の症状が出る前から薬を服用しておくと、症状が出てから薬を飲むよりもずっと症状が軽くて済む。最近は眠気が少なく効果の強い第二世代と呼ばれる抗ヒスタミン薬が使われており、通常はスギ花粉が飛び始める前の1月ごろから薬を服用している。
 昨年の猛暑の影響のため今シーズンは例年より大量のスギ花粉が飛散すると言われており、すでに症状が出始めている人もいる。マスクや防護メガネの花粉グッズを買い込んだAさんは幸いまだ症状がでておらず、初期療法で花粉症を乗り切るつもりだ。
(徳島大学医学部教授 武田 憲昭)
日本経済新聞 2005年2月8日夕刊

花粉症、スギだけじゃない
ヨモギやブタクサ…
果物アレルギー併発にも要注意
 昨年の猛暑の影響で早く成長したスギの花粉が秋から飛び始め、例年より四カ月も早く悩む人が出ている。だが、原因はこれだけではなく、他の植物に注意が必要な場合もある。また花粉症の人は「別のアレルギーにも用心したい」と指摘する専門家もいる。スギ以外に気をつけておきたいこととは…。
 Bさんは朝日覚めたら顔がはれ上がっていた。もともと花粉症かどうか確かでなく、特に原因が思いつかなかったが、花粉症に詳しい東邦大学の佐橋紀男教授は「枕もとに飾ってあったハイビスカスの花粉が顔にこぼれ荘ち、アレルギーの皮虜炎が起きていた」と分析する。
 通常の花粉症は風が受粉の仲立ちをする風媒花の花粉が一般的な原因。風媒花の揚合は風で数10km先まで運ばれるように小さくなっており、大量に放たれるので口や鼻から吸い込みやすい。その典型がスギだ。
 一方、観葉植物の多くは昆虫が花粉を運ぶ虫媒花。花粉が飛散しにくいため、花粉症の原因になりにくいとされてきた。しかし、佐橋教授は「ガーデニングや生け花で花粉に触れる機会が多い人は気をつけた方がよい」と呼びかける。



 宙を舞っていない花粉でも触ることで体内に入ることがあり、いったん入れば体にとっては異物なので花粉症の可能性がある。症状は皮膚炎や下痢、食欲不振と全身に及ぶ例もあるという。
 また、同じ虫媒花のセイタカアワダチソウは空き地などに繁殖し、秋に花粉がこぼれ落ちる。これが体についてアレルギー症状を示す患者も多く、「秋花粉症」とも呼ばれている。八月後半以降に、ヨモギやブタクサが原因となるケースもある。
 このため、スギの花粉症だと思っていても実際は別かもしれない。また、こうした花粉症の場合はスギの季節にとどまらない。実際、佐橋教授が理事長を務める特定非営利活動法人(NPO法人)の花粉情報協会では花粉症対策の問い合わせが一年中絶えず、“通年化”がうかがえるという。
 いずれにせよ花粉症対策は地道な取り組みが欠かせない。「マスクやメガネで花粉が肌に触れないようにするのが先決だ。患者は早めに病院を訪ね、症状が出てしまう前に薬をもらってほしい」と佐橋教授は助言する。



 一方、花粉以外のアレルギーを併発することもある。
 Aさんはリンゴを食べると、のどが荒れたような違和感があり、時には唇がはれた。持病の花粉症に伴う症状と思い込んでいたが、国立病院機構相模原病院臨床研究センターの海老沢元宏アレルギー性疾患研究部長は「果物アレルギーの典型症状」と説明する。「花粉症患者は併発しやすい」とみている。
 果物や野菜の成分が口の粘膜に触れて症状を引き起こしており、口腔(こうくう)アレルギー症候群と呼ばれる。のどのざらつきや唇のはれのほか、首にかけて発しんが出たりせきが止まらなくなったりすることもある。重症では血圧が下がり意識が遠のくという。
 アレルギーを起こす花粉の種類によって、併発しやすい果物や野菜は様々。スギ花粉症患者はトマトにも反応しやすいそうだ。
 また、欧米ではシラカバの花粉症患者がリンゴで同症候群を示す例が1980年代から報告されているという。シラカバの花粉が含むたんばく質はリンゴのたんばく質と一部が似ており、リンゴにも体が反応してアレルギー症状になるとみられている。シラカバ花粉症患者の2〜7割が同症候群を併発するとも言われている。
 海老沢部長は「原因となる果物などを避けることが大切。気づかずに繰り返し食べると症状が悪化しかねないので注意が必要だ」と話す。
日本経済新聞 2005年1月25日夕刊

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