MAN会報
エンディングノート作り

理事 吉岡 孝子

 私の夫は、ホスピス病棟に転科することが決まった時、1冊のノートを渡してくれました。それは葬儀と遺産分割について書かれたものでした。残された家族が困窮しないようにどうしたら良いのか、葬儀はどこで、葬儀委員長は誰にお願いするのか、連絡する人は誰か、相続に当たって子供たちの後見人は誰にお願いするか、等細かく書かれていました。そのおかげで私は、迷うことなく葬儀や遺産相続を終えることができました。「葬儀は賑やかに」という夫の遺言もあったのですが、淀川キリスト教病院は後日、病院葬を行って下さり、たくさんの患者さんに送って頂きました。
 さて、49歳で亡くなった夫と6歳違いの私もいつの間にか60歳を過ぎました。寂しがり屋の夫も私と逢える日を、首を長くして待っていることだろうし、残された私の人生上り坂、下り坂、まさかの坂もあるかもしれないことを考えて、エンディングノート作りを始めることにしました。資産や借入金、相続について、葬儀について等もちろんですが、夫が残した言葉の中に、延命治療はいらない、ということがありました。私も、意識不明になったら苦痛を取り除いて欲しいのは当然ですが、延命治療はしないでよいことを伝えておきたいと思います。そして、しなかったからといって、誰にも親不孝者と言われることも、私にすまないと思うこともないよう、「母の遺言」であることを伝えておきたいと思います。それから最後にハグをして欲しいことも伝えておきたいと思います。
 先日東京行の飛行機に乗った時、いつものように前席のポケットに入っている雑誌「翼の王国」を読んでいると、吉田修一と言う人が、「フリーハグを、世界中でしている人をユーチューブで、見た」というエッセイを書いていました。「Free Hugs」と書いた紙を持ち、街角に立って道行く人たちとハグをするというものでした。ハグの習慣のない日本人には、なかなか難しいのですが、ハグの持つ力について、またスマートなハグのできる人になりたいということが書かれていたと思います。夫が病気と闘っている時誰一人ハグをしてあげなかった。もし、あの時家族がみんなでハグしてあげれば夫の心の平安はいかばかりだったろうと思うのです。私の人生の最後はみんなでハグ、また、私に繋がる家族がハグをスマートにできるような人になって欲しいことをエンディングノートにもしっかり書いておこうと思います。


次ページへ→

←目次に戻る