MAN会報
セマフォリンによる免疫制御
―アレルギー疾患との関連を中心にー


大阪大学大学院医学系研究科・呼吸器免疫アレルギー内科
教授 熊ノ郷 淳

 免疫とは、その名の通り「疫(病気)を免(まぬが)れる」ため、私たちが健康な生活を日々送るために、生まれながらにしてもっている体を守る仕組みです。しかし、この免疫が破綻すると、喘息やアトピーなどのアレルギー疾患、関節リウマチやSLEなどの自己免疫疾患、それにエイズなどの免疫不全症、がん等の様々な病気の原因になります。
 私たちが研究しているセマフォリンタンパクは、1990年代に神経の発生を司る神経ガイダンス因子として見つかってきたタンパク質群です。セマフォリンの名前の由来は「手旗信号」を意味する「semaphore」から来ており、これまでに20種類を越えるタンパク質が見つかっています。
 当初は神経に働くと考えられてきたセマフォリンですが、私たちは2000年にヒトの免疫不全症に関わる遺伝子を探す中で、Sema4Dというセマフォリンが免疫において重要な役割を果たしていることを世界に先駆けて明らかにしました。神経発生に関わるセマフォリンが、ウイルスや細菌などの外的から身を守るための免疫で働いているなど、その当時は考えられないことでしたが、その後も次々と免疫に関わるセマフォリンが発見され、現在免疫において機能するセマフォリン分子群は「免疫セマフォリン分子群:immune semaphorins」の名称で呼ばれています。
 私たちの一連の研究に触発され、アトピー性皮膚炎、喘息などのアレルギー疾患、関節リウマチ等の自己免疫疾患、多発性硬化症、骨粗鬆症、網膜色素変性症、心臓の突然死の原因、癌の転移・浸潤など、セマフォリン分子群が「ヒトの病気の鍵分子」であることが国内外の研究グループから相次いで報告され、疾患治療の新しい創薬ターゲットとしても注目を集めています。

【参考文献】
1) Nojima et al. Nature Commun. 4:1406, 2013
2) Hayashi M et al. Nature 485:69, 2012.
3) Takamatsu H et al. Nature Immunol. 11: 594, 2010.
4) Nogi T et al. Nature 467:1123. 2010.
5) Suzuki et al. Nature Immunol. 9:17.2008.
6) Suzuki K et al. Nature 446(7136):680-4. 2007.


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