MAN会報
アレルギー性鼻炎に対する新治療戦略

福井大学医学部耳鼻咽喉科・頭頸部外科学 教授 藤枝 重治

 アレルギー性鼻炎は、発作性反復性のくしゃみ、鼻汁、鼻閉を3大症状とする鼻のアレルギー性疾患である。代表的な原因物質としてダニとスギなどの花粉があげられる。2006年〜2008年福井県で行った20歳から50歳まで1590名の調査では、スギ花粉症の有病率は約37%あり、それ以外に15%から20%の人が、スギ花粉症未発症であるがスギ抗原感作陽性であった。すなわち今後さらにスギ花粉症が増加する可能性がある。この増加原因は明らかでないが、スギ花粉症による社会経済的損失、医療支出、QOLの低下などは大きな社会問題となっている。
 さらにもう一つの問題として、スギ花粉症の低年齢化がある。我々は福井市主催の18ヵ月児健康診断受診児408名を対象者として、3種類の抗原特異的IgE(ダニ、ネコ、スギ)、鼻汁中好酸球、鼻の症状を調べた。その結果3項目のうちいずれかの抗原特異的IgE陽性者は44名(10.7%)、鼻汁中好酸球陽性者29名(7.1%)、両者陽性者8名(2.0%)であった。抗原別では、ダニ31名(7.6%)、ネコ12名(3.0%)、スギ5名(1.2%)が陽性であった。以上のことから、18ヵ月児のアレルギー性鼻炎の有病率は最低でも1.5%であった。おそらく何らかの対策を行わなければ、今後もっとスギ花粉症の低年齢化が進むと思われる。

 現在、抗原特異的免疫療法は、唯一根治性のある治療法である。これまでは皮下注射で行われてきたが、最近は舌下にて行われるようになってきた。本邦でもスギ花粉症に対し、偽薬との対照二重盲検試験が行われ、その有用性が示されている。舌下法は、皮下注射に比較して、重篤な副反応も極めて少なく安全な方法であった。奏功率は60%程度、薬物の併用は有意に減少する。ただ少なくとも3年間治療が必要であった。そこで少しでも早く効果を得るために、乳酸菌(タブレット型)との併用を検討した。これも偽薬との対照二重盲検試験を厳密に行ったが、6ヵ月の治療で、スギエキスと乳酸菌の併用で有意に症状と薬物併用が減少した。これは微生物がもつ免疫担当細胞の活性機序を利用したもので、今後臨床的にも応用可能であると思われる。また舌下治療は他の抗原感作も予防できるとの報告もあり、今後のアレルギー性鼻炎発症予防にも有効である可能性が高い。


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