MAN会報
食物礼賛 その9
― 女性のための食養と手当 ―


理事 藤田 きみゑ

 4月というのに比良八荒の荒れ終いとでもいうのでしょうか、台風のような低気圧の襲来で、折角の週末が雨と風に終始しました。この低気圧は日本を縦断し北海道に大量の降雨をもたらしています。洪水の恐れがあるとのことですが、大事に至らないことを祈るばかりです。この爆弾低気圧は昨年の四月にも襲来し桜の花を散らしました。満開の桜は入学式のシンボル、桜のない記念写真なんて新入生は可哀想ですね。
 さて今回、ことさらに女性を取り上げたのは、女性には冷え性という特有?の症状が起こりやすいこと、妊娠、出産という女性だけの役割があること、また、閉経という体調の変化が起こるからです。女性は年代と共に変化する、その変化に応じた対処法をこれからお伝えします。

●冷え性は女性の代名詞?
 かく言う私も若い頃は折り紙付きの冷え性でした。なのに当時はツイッギーという痩せっぽちなモデルの影響でミニスカートが日本中で大流行、少し前のめりになるとお尻が見えそうな超ミニのスカートを冬の最中でも履いていました。手足は何時も冷たく、その影響なのでしょうか風邪をひくと長引いて、大学生の頃は1年に一度は肺炎を起こしていました。その頃は分からなかったのですが、体が冷え切って免疫力が低下していたのです。結婚後、第一子の出産は48時間の陣痛に苦しみ、子供は吸引分娩でやっと生まれ、出産時の力みのために上半身と顔面に酷い点状出血を起こしました。そして産後の出血が50日も続いて、胎盤の残存があるとのことにて掻爬(そうは)の憂き目にも遭いました。後になって、もともと冷え性の私が流行の先端を追ったがために、子宮の血流循環や収縮力が更に低下したためと分かりました。
 女性にとって冷え性は万病の元です。体が冷えると子宮や卵巣の発育が障害され、月経困難症や月経過多、また不妊や不感症、難産などを起こすのみならず、あらゆる病気の誘因となります。健やかな日常を送るために、また安産のためにも女性は体を冷やしてはいけないのです。流行は繰り返すといいますが、私の若い時代に最盛期を迎えた超ミニスカートが再び流行り出していて、寒い時にもミニスカートに加えて9.0cmの高さのハイヒールで闊歩する若い女性を見るに付け、私の二の舞になるのではないかと、行く末が案じられてなりません。
 東洋医学的には冷え性はのぼせ感のないものと、のぼせ感のあるものに分けられ治療法が少し異なります。のぼせ感が無く、手足が何時も冷たく、特に酸っぱい食べ物を好む方は常に温かい食事を摂取するように心がける必要があります。ジュース類や生野菜は禁止ではないのですが、できるだけ茹でたり、煮たり、焼いたり、蒸すという火を通した温野菜を摂るようにします。また魚や肉類の調理も火を通したものがお勧めです。飲み物はコーヒーや緑茶よりは温かい紅茶が良いのですが、それ以上に水ではなく温かい白湯を常飲するようにします。またケーキやクッキー、クリーム類、菓子パン、甘い清涼飲料水などの甘いものは陰性食品であり、体を冷やし血液を酸性に傾けるため減らします。もちろん、アイスクリームやかき氷などの冷たいものは更に体を冷やしてしまいます。
 冷え性の方が体を温めるためにと生姜(しょうが)をよく使用されることがありますが、生姜には料理に用いられる生の生姜(しょうきょう)と天日に干した乾姜(かんきょう)があります。のぼせ感の無い方は、乾姜を煎じてお茶代わりに飲めば体を温めることができますが、生姜は胃腸症状の改善や毒素排泄には役立つものの、多量の連用はかえって体を冷やすことがありますので気を付けて下さい。
 のぼせ感のある方で、冷たい飲み物や食べ物を好む方は野菜ジュースもサラダも大量でなければ大丈夫ですが、チョコレートやスパイス類の取り過ぎは神経を高ぶらせるので気を付けましょう。  のぼせ感があるなしに関わらず、冷え性の方の日常の食事としては、精米した白米より五分づきや三分づきを柔らかめに炊いて、黒ごま大さじ2杯をよく擂ったものに粗塩を加えてごま塩とし、ご飯に振りかけてよく噛んで食べます。副食類は和食を中心とします。野菜や海藻類、こんにゃく類、キノコ類、魚介類や味噌、納豆、湯葉、豆腐、豆乳などの大豆製品をバランスよく摂るようにして下さい。また、血液の流れを改善する玉葱、ニラ、にんにく、梅、らっきょなどを毎日の生活の中に取り入れます。玉ねぎやニラの味噌汁、らっきょうの酢付け、梅干し番茶といった按配です。牛肉、豚肉、鶏肉などの肉類や卵、牛乳は減らして摂りすぎないようにします。カルシウムの補給のために、かえりちりめんの酢付けや骨せんべいなどを摂りますが、足らなければカルシウム剤での補助が必要となります。
 手当法としては足浴や腰湯を行います。今回の足浴法は若い女性や更年期の方に対する方法で、高血圧や心臓に病気のある方、老齢の方の入り方とは異なりますので注意して下さい。
 足浴には両足がゆったりと入るバケツを用意します。それに体温より少し熱い目のお湯を6分目ほど入れます。また同じように水が入ったバケツと、差し湯のための熱いお湯をいれた大きめのやかんを用意します。お湯に両足を浸けて温めます。お湯が冷めたら差し湯をして段々と湯の温度を高くします。初めは熱いお湯に足を浸けることができませんが、段々と熱さに慣れて熱いお湯に抵抗なく入れるようになります。温まったと感じたら水の入ったバケツに30〜60秒ほど足を浸けます。また熱いバケツに足を入れ交互にこれを繰り返します。体が熱くなり汗ばむようになれば最後に水のバケツに3秒間ほど浸けて皮膚をひきしめ終了します。足浴の時間は15〜20分で終了するようにします。また足浴は眠る前に行い終了後直ちに眠るようにします。足浴をすれば全身浴は行いません。それは困るという方は、足浴前にさっと全身のシャワー浴をしておいて下さい。ちなみに、米国ではこの足浴法とアスピリンで風邪を治すようです。
 腰湯は大きなたらいを使うとよいのですが、今時、大きなたらいを置くスペースがないので風呂場で行います。腰までのお湯を張りますが、この高さではお湯の温度を上げにくいため、差し湯のために大きめのバケツに熱いお湯を用意しますが、差し湯の時に火傷をしないように注意して下さい。お風呂には立て膝をして入り、お尻と腰の部分、足先だけをお湯に浸けます。冷めたら差し湯をしてできるだけ高い温度に保ちます。10分も入っていると汗が出てきますので、腰湯の後はさっと体を拭いて直ぐに休みます。冬は寒いので上半身は着衣したままで腰湯をして下さい。この腰湯の時に大根葉を干したものを3株ほど鍋で煮出して、その煮汁を漉してお風呂に入れるととてもよく温まりますのでお試し下さい。  冷え性はつまるところ血液循環が悪いために起こる全身症状なのです。このため治療法は血液循環を改善させ、手足の末梢部分まで血液を循環させることに尽きます。西洋医学的にはV.Eが足らないと循環不全が起こりやすくなるため、ユベラなどのV.E剤や循環改善剤などの内服を行いますが、この療法だけで完治を期待することは難しいようです。
 一方、東洋医学では冷え性を病気と捕らえて、様々な漢方処方や鍼灸治療が為されています。当帰芍薬散は若年者や更年期ののぼせ感の無い冷え性に用いられる代表的な薬方です。これ以外にも加味逍遙散、当帰四逆加呉茱萸生姜などが患者さんの証(体質)に併せて処方されます。のぼせ感のある冷え性には桂枝茯苓丸が代表的です。何れの薬方も正しく証を診断した後に処方されるべきもので、証を取り違えると逆効果になるのが西洋医学との大きな違いです。また、最近は若い人たちに肩こりや美容、体質改善を目的とした傷跡の残らないお灸ブームが起こっているそうですが、のぼせ感のない冷え性、また特に虚弱な体質の方には効果が期待できます。次回は産前産後の食養と手当についてお知らせします。       (滋賀県立大学名誉教授)

【参考文献】漢薬の臨床応用 中山医学院 医歯薬出版社
       自然療法:東城 百合子 あなたと健康社


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