MAN会報
食物礼賛 その8
― 免疫力を高める食品 ―


理事 藤田 きみゑ

 9月も終わりになって、やっとクーラー無しで眠れるようになりました。今年も本当に暑い夏でした。当院に来院される患者さんから、「体が溶けそう」とか、「もう夏には飽きました」という言葉が聞かれました。その話しぶりに、暑さに耐え切れなくなっている状況が伺えて、大丈夫かなと心配していたのですが、皆さん何とか無事に夏を越されたようです。
   年齢を重ねると色々と体の変化が起こり、体の動きのみならず、頭の回転速度も劣り、人の名前が思い出せなかったり、今、何をしようと思っていたのかが解らなくなったりします。しかし、このような状態は高齢者に限ったことではなく、近頃では、30代後半からの働き盛りの人たちにも、同じようなことが認められるようになりました。そこで今回は、脳細胞の活性化や、脳血流を改善することが期待できる食品についてお知らせします。

1.ぼけ?それとも単なる物忘れ?
 アルツハイマー病やパーキンソン、また、脳梗塞や脳出血後に起こる発語障害および健忘症は、脳細胞そのものに障害が起こり発症するものです。その一方で、脳にはっきりした病変がないのに物忘れが起こることがあります。この原因として考えられるのは、脳への血流状態の変化です。脳細胞が最もダメージを受けるのは低酸素状態と低エネルギーであることから、これを引き起こす脳血流速度の遅延ならびに脳血流量の減少、そしてそれを来す脳動脈硬化と脳血管スパズム(収縮)などが原因として考えられます。スパズムは主にストレスが原因と考えられるため、ストレスの回避が重要ですが、脳血流の改善や動脈硬化の予防、あるいは進展の防止には、食物による対応が可能です。

2.動脈硬化を予防するために
 どのような病気でも、薬を服用する前に食を正す必要があります。前にもこの紙面でお知らせしましたが、本来、日本人は倹約遺伝子という粗食に耐えられる素質を保有している方が多く、現在のような肉食過多や糖質過剰の食事や間食は、肥満や動脈硬化を起こし易いと考えられています。そのため、牛肉、豚肉、鶏肉などの肉類を摂取する時には、霜降り肉やバラ肉、皮付きなど油の多い部分を避け、赤身やフイレ、ささみや胸肉などを選びます。その上で、肉製品の摂取量は、健康で動き回っている方でも1日100gを越えないこと、また、心疾患や脳疾患、脂肪肝などがある方は、1日70g程度とします。この理由は、動物性のタンパク質に含まれる必須アミノ酸はヒトにとって重要で、必ず摂取する必要があるのですが、大量に摂取すると代謝に必要なV.B6などの不足を起こし、その結果、毒素が発生して脳細胞に影響を与えるようになるからです。
 また、肉食の割合は、1週間に3~4回までとし、後は魚貝類の摂取を行います。同時に、大豆製品であるみそ、豆腐、湯葉、納豆、高野豆腐などを1日1回は摂取するようにします。
 さらに、フイトケミカルや食物繊維の摂取のために、1日必ず300g以上、糖尿病や高脂血症のある人は600g以上の根菜類、ねぎ・玉ねぎ類、葉菜類をバランスよく摂取する必要があります。また、こんにゃく類やキノコ類、海草類なども適宜、食品目に加えるとより理想的ですが、甲状腺疾患のある方は、海草類が制限される場合もあるので、注意して下さい。
 肥満が動脈硬化を助長することから、砂糖、菓子類、菓子パン、酒類などは基本的に制限、あるいは禁止となります。また、喫煙は脳血管を収縮させるため、禁煙が必要です。

3.健脳が期待できる食品
 昔から、黒豆と黒ごま、餅米、かやの実、くるみ、山芋は不老長寿薬として珍重されてきました。少し物忘れが多くなったと感じる方は、上記の基本的な食事に重ねて、これらの品目を摂るようにします。食べ方としては、黒豆2、黒ごま1,餅米7(できるだけ無農薬玄米餅米がよい)をきつね色にから煎りし、ミキサーなどで粉末にしたものに、山芋を干して粉にしたもの2(健康食品店などで販売されている)を加え、黒砂糖を適宜加えて薄く甘味を付け、毎日、昼食後に杯にすり切り4〜5杯ずつ食べると老衰しないと言われています。但し、山芋が食べられない方はこれを抜いても大丈夫です。  また、黒豆、黒ごま、餅米、かやの実、くるみを同じく炒って、ミキサーにかけ粉末にしたものを食後に杯に2〜3杯食べると良いとも記載されています。
 一般的には、これら健脳に働く食品目を、黒豆ご飯や、黒ごまやくるみの和え物、とろろ汁など、普段の食事の中でできるだけ多く摂取するようにするのも一方法です。

4.血流を改善する食品
血液さらさら状態と、よくテレビのコマーシャルなどで宣伝されていますが、実際に赤血球などの血球の流れを改善するものがあります。魚類、梅肉エキス、卵の油、硫化アリルを含むらっきょうや玉ねぎなどです。
 魚類にはエイコサペタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)が含まれており、これらの成分は血流を改善することが良く知られています。今なら、サンマが旬で安くて美味ですが、調理法としては油を適当に落とす塩焼きが最良と考えられます。
 梅肉エキスは就寝前に大豆大を微温湯に溶かして飲用します。就寝前に飲む理由は、就寝中に血圧が下がることにより血栓ができ易くなるためで、梅肉エキスはこれを予防します。また、卵の油は特殊な方法で卵黄を煮詰めたものであり、狭心症の民間療法として有名です。これを作るには大変な手間が必要で、現在は、瓶入りのものとカプセルに入ったものが市販されています。卵の油は油脂なので、瓶入りのものは酸化され易く、カプセルの方が長期保存が可能です。
 らっきょうは酢漬けにしたものが保存が良く、酢と合わせることで効果が高まります。毎日、小粒のものなら6〜8個程度、大粒なら4〜5個程度を食事の時にいただきます。

5.体内の不要な重金属を排泄する食品
 体内に取り込まれた水銀や、鉛、カドミウム、アルミニウムなどの不要な重金属の排泄には、黒豆、小豆、なた豆などの豆類、タマネギ、ニンニク、らっきょ、にらなどの硫化アリル植物、紫蘇葉、ボウフウなどの刺身のツマに用いられる食材、大根、ブロッコリー、牛蒡、きのこ、リンゴなどの野菜や果物、寒天、ココア、シナモン、ペパーミントなどの嗜好品、タンポポコーヒー、玄米の黒焼き、ジュアールテイー(アフリカ茶)、ダッタンそばなどの健康食品、芍薬、甘草、桂枝、生姜などの漢方製剤などが有効です。
 日常的に、これらの食品目を色々と組み合わせて使用することにより、自然に不要な重金属類が尿や便中に排泄され、細胞が正常に働くように調節されます。

6.健忘に用いられる民間薬と漢方製剤
 民間療法でよく用いられるのは、決明子(けつめいし:日本製のハブ草とは異なります)です。500mlの水に決明子小さじ山盛り3〜4杯入れ、半量になるまで煮詰めて、茶代わりに服用します。この決明子にゲンノショウコをふたつまみを加えて煎じることもあります。
 漢方薬では、最近、抑肝散(よくかんさん)が健忘症に効果があるとされ、臨床でよく用いられているようです。但し、漢方薬は西洋薬と異なり、証の違いにて使用できない場合もあるので、漢方に詳しい先生への受診が必要です。
(滋賀県立大学名誉教授)

【参考文献】くらしの生薬:後藤 寶著,山田光胤監修 たにぐち書店
       自然療法:東城 百合子 あなたと健康社


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