MAN会報
最新の乳癌治療

大阪府立成人病センター 乳腺内分泌外科 部長 玉木 康博

 日本においては乳がんに罹患する女性は増加の一途をたどり、生涯リスクは16人に1人という状況です。それでもまだ欧米に比べるとリスクは低いという見方もありますが、これは60歳以上の乳がん発症率が日本人では低いからです。50歳以下、すなわち1960年代以降に生まれた女性の罹患率は米国と変わらず、今後この世代が高齢化とともに欧米と同様の罹患率を示す可能性は否定できず、早期発見のための検診体制の確立が重要と考えられます。
 一方、乳がんに対する治療はこの20年の間に大きく変化してきました。従来からの乳房切除に代わって現在では乳房温存手術が標準手術となっており、早期乳癌に対してはセンチネルリンパ節生検が広く行われ、腋窩リンパ節郭清を施行する症例は激減しました。さらに最近では術後の乳房の整容性を向上する目的で、一期的乳房再建も行われるようになっています。また、手術だけではなく、病状にあわせて放射線治療、化学療法、ホルモン療法、分子標的治療などを組み合わせ、多角的に治療をするのが現在の乳がん治療の原則です。女性ホルモンの働きを抑えるホルモン療法や、抗がん剤治療はこれまで乳がん治療の中心でしたが、乳がんそのものの遺伝子の発現や細胞分裂にかかわる因子が徐々に解明されつつあり、その重要な部分をピンポイントで抑える分子標的治療薬は今後の乳がん治療において大きな意義を持ってくるでしょう。この時重要になってくるのは、どの患者さんにどの治療をするのかの選択の判断です。以前はがんの再発リスク因子をもとに決めていましたが、最近はがんのもつ性格によってサブタイプと呼ばれるグループ分けをし、治療法を選択するようになっています。患者さんそれぞれの乳がんにあわせた個別化治療ができるようになる日がいずれやってくると期待しています。


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