MAN会報


森山 宏美

私は、教師になって35年になる。この学校には25年いる。学生は、地方の出身の子供が多く、素朴で素直でまじめな子がほとんどだ。今日は、教師日記の中から、ひとつをご紹介しよう。
ある日、講義を終えて研究室に戻ってくるとひとり部屋の前に男子学生が立っている。
「どうしたの。何か相談かな。」
返事をしない。
「まあ、部屋にお入りなさい。」
電気をつけて部屋に入ってみると、どうやらその学生は泣いているらしかった。
「いったいどうしたの。そこへ腰掛けてごらん。」
泣きながら早口で話すのを一生懸命繋ぎ合わせてみると、事の次第はこのようなことらしい。
ある先生の授業で、先生が話されているときについアクビをしてしまい、偶然それをその先生が見て激怒され、「そんなにわたしの話が退屈なら、出て行くがいい!!」
その学生は、「いいえ、違います。すいません。」と言ったけれど、その先生は許さず、「もう、二度と来るな!!」とおっしゃって、部屋を放り出されてしまったらしい。
どうしても、あの先生の科目の単位はとらなくてはならないとのことのようだった。
「そしたらね、、、先生にちゃんとお詫びの手紙を書いて、その先生のポストへ入れて今日はお帰りなさい。丁寧に書くのよ。」
「それから、一週間後の授業に行って部屋の隅に座ってこんどは、もうそんなことが無いようにしっかり授業を受けなさい。それでも、先生が出て行けっておっしゃったらまた来なさい。」
そう言えば、あの子はわたしのクラスにも来ていた。少し大人を小馬鹿にしていると誤解されるような面があった。本人は認識していないかもしれないが、、、
今度来たら、少し話してみようと思った。が、どうやら、先生も許して下さったのか、その男子学生は来なかった。
親元をはなれたばかりの18歳。まだそんなものだろうか、、、
(奈良大学准教授)


次ページへ→

←目次に戻る