MAN会報
第43回
御堂筋アズマネットワーク勉強会
スギ花粉対策に行政動かす第一歩


理事 藤川 儀夫

 平成23年11月22日(土)第43回御堂筋アズマネットワーク勉強会が例年通り大阪大学中之島センター佐治記念ホールで251名という多くの聴講者を迎え、盛大に開催されました。今回の勉強会は今や国民病とまでいわれる花粉症について「スギ花粉を考える」と題した講演会ならびにパネルディスカッション方式で行われました。
 今回の勉強会の計画実施に当たっては、医療法人宮武内科院長 宮武 明彦先生が常々、花粉症による年間医療費700億円の削減対策に思いを募らせておられたところ、今回の講師の先生方との出逢いがあり、ご協力の同意を得られたとお伺いしています。また特筆すべきは、宮武明彦先生が会長の要職にある大阪御堂筋ロータリークラブ(RC)を中心として、大阪南RC、大阪天満橋RCの多数のロータリアンの皆様方、また日頃、お世話になっている大日本住友製薬株式会社様、及びアステラス製薬株式会社様が主催者や協賛者となって本勉強会に参加頂いたことであります。当日お世話になりました講師の先生方及び、ご協力ご支援いただきました多くの方々に本誌面をお借りして心より厚くお礼申し上げます。
 第一部の総合司会者としてNPO法人御堂筋アズマネットワーク高峰秀樹事務局長の開会宣言の後、宮武明彦先生より主催者を代表して今回の勉強会の目的・主旨を「スギ花粉の認識と対策についてどのように考え、どのように行動すればよいのかの契機になれば幸いであります」と明確にされ、同時に協賛者への謝辞表明がなされました。
 当日の講演者は、内閣官房国家戦略室 前内閣審議官 梶山 恵司様、独立行政法人森林研究所 花粉動態担当チーム長 金指 達郎様、独立行政法人森林研究所 植物生態研究領域長 清野 嘉之様であり、座長は、大阪南RC会長 山本 博史様、大阪天満橋RC会長 二宮 秀造様、東洋木材新聞社 社主 島崎 公一様、大阪御堂筋RC会長 宮武 明彦でありました。また、特別来賓者は、大阪医科大学 学長 竹中 洋教授、大阪府立呼吸器アレルギー医療センター小児アレルギー科 土井 悟部長でした。後半に前原政調会長殿からの祝電披露がされ、「スギ花粉症は今や2500万人の国民病でありその問題解決に意見交換いただき、スギ花粉に対する認識・理解と対策に前向きに取り組む協力をお願いしたい」とのメッセージを頂戴しました。次に当日の講演要旨を供覧致します。

 金指 達郎氏 「スギ雄花生産量と開花時期の年変動―花粉飛散予報の高度化に向けて―」
 日本のスギ人工林は日本国土の12%強を占め、このうちの多くが花粉を発生させる地域である。スギ花粉を発生させるのは30年生以上のスギが中心となっており、1個の雄花には40万個の花粉がつくが、雄花は毎年7月に花芽分化し翌年3月頃開花する。日本国民の26%がスギ花粉症に罹患しており(2008年度統計)、現在は雄花開花前に雄花着花量を観測し、花粉生産量を推測している。花粉飛散予報の的中率は27%〜40%程度で、今後、予報の高度化(情報提供)が可能である。
 清野嘉之氏 「森林管理を通してスギ花粉の削減に取り組む」
 花粉の問題については既に昭和31年、横浜喘息として指摘され、この原因としては、1950年〜1970年代に大量に植林されたスギが現在の花粉症発病の原因となっている。スギ林と花粉症有病率の関係については、2005年度全国耳鼻咽喉科調査にて雄花量と有病率とが密接に関係している事が立証され、前年の夏の気温とスギ花粉の発生量とは比例するため、日本は森林管理の長期計画策定が必要である。また、スギ花粉に対する森林管理目標としては、人工林の”木“の利用や人口材の天然林化、花粉生産量予測のモデル作成が必要である。また、モデルの検証を踏まえた望ましい森林管理の提案として、薬剤の使用や間伐、枝打ちの応用、樹種(品種)の転換、 スギ材の積極的利用の推進など、スギ花粉削減対策が必要である。
 梶山恵司氏 「林業の抜本的改革を進める―森林・林業再生プラン」
日本は国土面積の68・2%が森林に覆われている世界でも有数の森林大国であり、その内、人工林面積は44%に達しているため、今後、日本の森林をどのように運営するのかの位置づけが重要である。日本の林業は採算が合わないとされ、採算が合わない理由として安い輸入外材が指摘されているが、現在は日本の木材の方が安い。日本の急峻な地形が林業の開発を阻むといわれているが、林業を成功させているドイツ、オーストラリア、東欧諸国も同じく急峻な地形である。しかしドイツにおける木材関連産業の雇用は100万人程度で採算が取れている。小規模経営が林業の推進を阻むとされているが、小規模経営者が多いことも先進国共通の形態である。さらに、賃金が高すぎるとの評価は逆で、日本の現場は低賃金であり、欧州の方の賃金コストが高い。

 林業は知識産業そのものであり、理論、技術の構築が重要である。現在における林業の課題としては、拡大造林による針葉樹の人工林化、人工林の手入れ不足、それから発するスギ花粉問題、予算的・時間的・財政的制約のあることであり、今後の解決策として、花粉の少ないスギの開発、バイオマス(木材によるエネルギー化)への転換、地場産業における高度な人材の育成などが考えられる。これからの森林・林業再生プランとしては、森林所有者のサポートシステムの構築、適切に維持管理出来る体制を10年で構築し将来に繋ぐ。その手法として、2012年度から努力する森林組合、小規模経営者にのみ”助成“ を行うなどの国の方針が決定している。森林作りは国家100年の計であり、財政的制約という極めて困難な課題・問題はあるが、森林・林業再生プランは何としても成功させねばならない。
 講演終了後、宮武先生が座長となり、各演者をパネラーとしてパネルディスカッションが行われました。宮武先生よりスギ花粉に関連して2008年度の日本国家予算は88・9兆円であり、総医療費は34・1兆円(38・3%) その内の薬剤費は8・3兆円(9・3%)また、薬剤費の内、抗アレルギー薬に使用される金額は1920億円(0・25%)に上り、スギ花粉関連の治療費として年間700億円(0・08%)が使用されているとの問題提起がなされました。また、甲府地区における2008年度スギ花粉飛散量は(1u当たり)20000個であり、花粉症に対して1270億円の医療費を必要としたのが、1u当たり1000個に減少した2009〜2010年度の医療費は1151億円であり、その差119億円の減少に繋がったとの実例報告がなされました。
 さらに、事前に提出された質問状及び座長の呼びかけによる会場からの質問に対し、パネラーより的確な回答がなされたのみならず、フロアの竹中 洋学長より、スギ花粉対策の一つとして環境と共存し、スギ花粉を身体に慣らす(免疫療法)ことも大切であるとのコメントを頂戴し、非常に有意義なパネルディスカッションとなりました。

 今回の講演会開催が戦後60年の分岐点にある日本林業が認識を新たにし、今後の進むべき方向性と、それに伴うスギ花粉対策への自覚と意識づけの重要性を提起する場になったと考えます。正に、「林業から医療を攻める」如く、今回の勉強会の参加者全員が行政を動かす”契機作り“に貢献する役割を担ったことが本勉強会開催の意義と成果であったと思われました。


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