MAN会報
反貧困と若者たち

監事 鳥居 義昭

10月19日、東京・明治公園で若者を中心とした「反貧困世直しイッキ!」という集まりの新聞記事を目にした。東京に向けて、東日本と西日本の二コースに分かれてキャラバンを組み、終結地の東京では2,000 人もの大集会となったとの報道である。クレジット、サラ金による多重債務問題に取り組んでいる弁護士の宇都宮健児さん、作家の雨宮処凛さん、反貧困ネットワーク事務局長の湯浅誠さんなどが呼びかけたものである。
 小林多喜二の「蟹工船」が若者たちの間でブームになり、新潮文庫が増刷を重ね、50万部が売れるなど、ちょっとした社会現象となっている。ビートたけしさんは、「渋谷あたりをウロウロしているおネエちゃんたちも、右手に『蟹工船』、左手に携帯電話を持つのがカッコいい時代になるというさ」(週刊ポスト6月20日号)と述べている。しかし、どうやらブームとかファッションという「軽い」ものではなくて、若者にとって、派遣労働や偽装請負所所主)という過酷な働かされかたの実態が、蟹工船時代の奴隷労働と変わらないと思い知ったのであろう。そして、「彼らは起ち上がった」との小説のラストシーンにもしらけることなく共鳴し、行動を起こすようになったのだと思う。
 集会参加者は「世直し」のために集まったという。「人が人らしく生きられない、人間がモノ扱いされる、命よりもお金や効率が優先される、貧困が広がる、そんな世を直すため」と宣言した。労働者をいじめ続けるのか、人間らしい労働を可能にしていくのか、あるいは社会保障を削り続けるのか、人々の命と暮らしを支える社会にするのかという今日の日本社会の大きな岐路に対して、「私たちは人間らしい生活と労働の実現を求める」と方向性を明らかにした。「自己責任の枠に自らをとじこめるのではなく、社会を変え、政治を変える方向に足を踏み出したことに拍手を送りたい。

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