MAN会報
食物礼賛(その2)
−メタボリックシンドロームと食べ物−


理事 藤田 きみゑ

前回はメタボリックシンドローム(複合生活習慣病予備軍)ならびに、メタボリックシンドロームの最も基本的な病態である肥満についてお知らせし、食品は表1から表6までに分類されること、そして、1日に定められた単位数(kcal数)で3食のメニューを作成すること、また、ご自分のBMI(Body Mass Index)指数を計算し、さらにあなたの理想体重を算出し、そこから必要なカロリー数を導き出す計算式をお知らせ致しましたが、ご自身の理想体重や必要カロリー数が計算出来ましたでしょうか(前号参照)。今回は、計算式のおさらいと具体的なメニュー作りならびにその注意点についてお知らせ致します。
生命保険会社にお勤めの外交員Mさんの場合、Mさんの身長は156cm、体重は62kgです。そうしますとBMI=体重÷[身長(m換算)×身長(m換算)]=62÷(1.56×1.56)で表され、BMI=25.5となります。このBMIの値は25を超えていますので、少し肥満の状態であることが示されています。また、Mさんの理想体重は、理想体重=22(理想BMI値)×[身長(m換算)×身長(m換算)]=22×(1.56×1.56)で計算され、理想体重が53.5kgで、現在の体重との差は62kg−53.5kg=8.5kgということになりますが、理想体重まで痩せるのは負担がかかることから、まずBMI=24までの目標を立てます。そうしますとBMI=24×(1.56×1.56)=58.4kgとなり、取りあえず3.6Kg痩せなくてはならないことになります。
必要カロリーの計算は、デスクワークの方は体重1kgに対して25kcalと計算しますが、Mさんは殆ど外で歩き回る外交のお仕事なので、体重1kgに対して30kcalと計算します。1日のカロリー量は、想定体重に体重1kgに要する必要カロリー数を乗じて算出するため、Mさんの1日カロリー量=58.4kg×30kcalとなり、1日カロリーは1752kcalとなります。ここで前号でお伝えした単位計算をします。1単位=80kcalでした。覚えていらっしゃいますか。1日カロリー数を80で割って単位数を計算しますと、1752÷80=21.9単位となります。Mさんの場合は、体重1kgに対して30kcalと多い目に計算をしておりますので、少数以下の0.9単位を切り捨て、1日の単位数は21単位となりました。
この単位数は1日量なので3食に振り分けます。Mさんの1日の食事は朝が軽く、昼も簡単に、夜は量を多めにという食事パターンを長年に渡り続けていらっしゃいました。また、Mさんは軽い肥満ですが糖尿病はありませんので、3食を均等に分ける必要がなく、朝は軽く4単位、昼はそれより少し多めの7単位、仕事中に小腹が空いた時のための3時の間食に1単位、夜は多めに8単位、合計21単位というメニューを作成しました。もし、Mさんに糖尿病がある場合、特に、抗糖尿病薬やインスリン注射をしておられるような場合は、できるだけ血糖上昇の値を一定にする必要があることから、朝・昼・夜のバランスはなるべく均等なものとすべきで、そのような場合は、朝5単位、10時の間食1単位、昼7単位、3時の間食1単位、夕食7単位のように、できるだけ均等に配分いたします。ここで、Mさんの具体的メニューを決める前に、全体的な食品目バランスを考えます。
ご存じのように、日本人は穀類主体の食事を先祖代々、千年以上にも渡り継続してきました。そのため、欧米の他民族より胃が下垂傾向にあり、腸が長く、便の停留時間が平均して長いという体質的特徴を有しています。この体質に最も合致する食事としては、穀類を主体とした野菜中心の食事が挙げられます。勿論、タンパク質や脂質は体を構成する重要な品目でありますので、必要量摂取は不可欠ですが、現在のようなタンパク質や油脂過剰の食事は、腸内における便の停留時間の長いことから、アンモニアやメタンなどの有害物質を貯留しやすく、腸の長い日本人には不向きとされ、1日の食品目摂取の割合は、穀類3:野菜・無機質2:タンパク質1であることが推奨されています。またこの内、タンパク質は、動物性タンパク質:植物性タンパク質の摂取比が1:1の割合がよいとされています。ここで忘れてはいけないことは、必須アミノ酸は動物性タンパク質にしか含まれていないため、摂取が必須であるということです。よく年を取ると肉類はできるだけ控えるようにと指導されますが、老年期にあっても1日に60〜70g程度の肉類は摂った方がよいわけです。但し、この量は豚肉でしたら機械でスライスされた薄切りが約3枚(60g=1単位)程度、牛肉の肩ロースだと薄切り4枚(60g=2単位)程と、決して多い量ではありません。しかも、この量は1日量なので、肉類のこれ以上の摂取は必要がありません。このため、朝食に卵と共にハムやソーセージ、昼食には牛丼あるいは豚のしょうが焼き弁当、夕食はトンカツやハンバーグとなると、動物性タンパク質がどうしても過剰となってしまうのです。
また、糖尿病の患者さんの場合、穀類などのデンプン質(炭水化物)の摂取時には、グリセミックインデックスを考慮する必要が生じます。グリセミックインデックスとは摂取した食品目がどの程度、血糖値を上昇させやすいのかを表したもので、表1に示しました。 



表を見て頂くと、同じ炭水化物(デンプン類)でも急激に血糖値を上昇させるものと、ゆっくりと血糖値を上げるものがあることが分かります。何故この様な分類が必要かというと、急激に血糖値が上昇するとそれに応じてインスリンが急激に分泌されるため、血糖値を上げやすい品目ばかり摂取していると、インスリンを分泌する膵臓が疲弊してしまうからなのです。
血糖値を最も急激に上昇させるのは砂糖です。このため、砂糖を多く使用する菓子類の摂取やジュース、ポカリスエットなどの糖質の飲料を多食・多飲することはお薦めできません。医師が菓子パンやケーキなどの糖度の高い食べ物、そしてアルコール類を制限するのは単にカロリーだけの問題ではなく、膵臓への影響が大きいからなのです。また、同じ穀類でも表の上部に記載されている血糖値を急激に上昇させやすい食品と、相対的にそうでない品目があることが分かります。一般的には穀類を一旦、粉状にし改めて成形したもの、例えば、もちやパン、うどんやそうめんなどの麺類は血糖値を上げやすく、米飯やスパゲティーなどは比較的ましであることが理解されます。このため、特に糖尿病の患者さんに対しての主食は、パンや麺類でなく米飯が推奨されています。
では、Mさんの1日単位割合を念頭に置きながらメニュー構成を考えます。食品目の単位数計算は前回お知らせしました小冊子、「糖尿病食事療法のための食品交換表」(日本糖尿病協会・文光堂発行)を参考にします。



何となくご理解頂けたでしょうか。具体的なメニューを作成時には以下の注意が必要です。

(1)海藻類、きのこ類、こんにゃく類のカロリー計算はいりません。ノーカロリー品目として扱います。この品目は大腸のお掃除をしますので、1日1回は是非召し上がって頂きたい品目であり、いくら食べていただいても結構なのですが、味付けに砂糖や味醂を用いると調味料のカロリーが入りますので要注意です。

(2)砂糖やみりん、ケチャップ、マヨネーズなどの調味料は全て単位に換算しなくてはなりません。生クリームを用いたケーキなどは驚くほど単位が高いものです。食事で満腹感を得るためには、醤油や塩、酢、レモン、香辛料など単位数の少ない調味料を上手に用いて調理する工夫が必要です。

(3)全ての野菜は300gが1単位と計算いたします。調理前の色々な野菜を取り混ぜて300gとします。但し、かぼちゃ、じゃがいも、さつまいも等は野菜ではなく、炭水化物として計算いたします。

(4)調理法として揚げ物、フライもの、炒め物は油を多く使用することから単位数が上昇し、多くの品目を食べることができなくなります。そういった理由から、調理法としては焚き物、蒸し物、焼き物をお薦めします。また、既に揚げてある出来合いのコロッケやフライものは、時間経過と共に油が過酸化脂質となり血管を損傷します。同じ理由で、お家で作る天ぷらも、揚げたては良いのですが、翌日召し上がることはお薦めできません。

(5)同じたんぱく質でも油成分の多いもの、例えばマグロのトロや霜降りのお肉などは1単位分の量が非常に少なくなります。ですから、お腹を膨らまそうとすると、白身の魚や赤身肉の方がグラム数が多く、満腹感が得られることになります。

(6)全ての食品目は食品交換表の冊子の量をご参照下さい。また、.交換表には外食時のカロリー計算表記があります。表をご覧になれば、外食が如何にカロリーが高いのかが分ります。毎日外食の方はこの点にご注意下さい。

(7)減量は1ヶ月1Kg程度2Kg迄とし、急激に痩せないようにして下さい。1ヶ月2Kg以上痩せる場合は、単位数を1〜2単位増やして下さい。また、反対に体重が全く落ちない場合は単位数を1〜2単位減らして下さい。体重は継続してゆっくりと落とすことが大切です。急激な減量や食品目が偏ったダイエット(例えばこんにゃくダイエットやりんごダイエットなど)は栄養不良となり体に異変を起こします。気を付けて下さい。

これからはお鍋等が温かく美味しい季節となります。お鍋は野菜やノーカロリー品目を多く摂れることから、水焚きやしゃぶしゃぶなどがお勧めできます。但し、同じお鍋でもすき焼きやおでんは味付けに味醂や砂糖を多く入れてしまうためカロリー数が上がります。基本的には、表1〜6の品目をまんべんなくバランスよく摂ること。アルコール類は少なめにし、休肝日を作ることです。糖尿病は特にアルコールはお勧めできませんが、飲めば全てカロリーになることをご記憶下さい。
また、糖尿病の患者さんで、厳密な食事管理をしておられる方は、月に1回の自由食事日(free day)を作ります。この日は甘いものもアルコールも好きなだけ召し上がっていただいて結構です。但し、次の日からは、指導された単位数の食事管理をきっちりと守るようにします。糖尿病の管理は毎日のコントロールが大切です。宮武内科には食品交換表の冊子が少しですが置いてあります。購入ご希望の方はお申し出で下さい。
(滋賀県立大学人間看護学部教授)
参考文献:糖尿病食事療法のための食品交換表 日本糖尿病学会編 日本糖尿病協会・文光堂発行2006

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