MAN会報
やる気とコミュニケーション

理事 津田禎三

(1)組織の強さは、そこに在る人達のやる気で決まる。
私は大学半ばで戦争に行き、戦後、小さな会社の経営もやりました。弁護士になってからは、事件を通じ或いは監査役として多種多様な会社経営の実態に触れ多くを学びました。目的意識を持ち、やる気に燃える人間集団の力は、時に、不可能を可能にすることすらあるということも知りました。
人のやる気に火を付けるのは組織のリーダーであり会社のトップの責務だと言えます。部下や社員との血の通いあったコミュニケーションが取れれば、やる気に火が付き、やがて大きなエネルギーとなります。

(2)相手と顔を合わせ相手の目を直視して自分の言葉で自分の意思を相手に伝えるのが、人間社会における最も自然なコミュニケーションのあり方だと思います。直接的なコミュニケーションの世界には、生き生きとした血の通いがあり心があります。どれほど立派なビジョンや経営計画、更には具体的な目的が言葉巧みに開示されても、しっかりとコミュニケーションが取られていなければ誰もついてこないでしょう。顔を見、膝を交えてのコミュニケーションがない限り、誰も納得しないし、やる気もおこさない。ビジョンは忘れられ計画は空転し、人はただ無目的に動くだけです。

(3)1999年、フランスのルノー社から日産自動車の最高執行責任者に就任したブラジル生まれのカルロス・ゴーンは、「経営再建三ヵ年計画」により、どん底にあった日産自動車を三年を待たずして巨額の赤字から大幅な黒字へと奇跡的に再生させました。
“コスト・キラー”とまで呼ばれたゴーン氏が、コスト削減強行策を実行し成功させるため最も重要な手段としたのは、社員との直接的なコミュニケーションでした。彼は、どれほど忙しくても、現場に足を運び顔をつき合わせて人の話しに耳を傾け、自分の言葉で自身の考えと意思を伝え続けました。やがて全社員が彼の考えと意思を理解し納得し、やる気をおこし、燃えあがったやる気の波は、目的達成に向けた大きなエネルギーとなりました。

(4)最近、生後間もない赤ちゃんと母親や周りとのコミュニケーションについて、ロンドン大学のガーガリー・チブラ博士の実験報告を読み大きな感動を覚えました。
赤ちゃんは、自分を真っ直ぐ見つめる顔をじっと見つめます。その時、赤ちゃんの頭に取りつけた脳波測定用のセンサーが強く反応し、特に赤ちゃんの脳の右側頭部が大変活発になっていたと報告されています。この事実は、コミュニケーションと右脳の働きについて大きな問題を提起するものです。母親の目を直視する赤ちゃんの姿はコミュニケーションの原点だと思います。諺に「目は口ほどに物を言う。」と言いますが、目は、ときに言葉以上の威力を発揮します。

(5)コミュニケーションにとって、言葉は重要な武器です。しかし言葉には限界があります。情報やメッセージの伝達は簡潔で明快でなければなりません。長々と続く難しいスピーチは、コミュニケーションにとって害はあっても何の効果もありません。耳から入った長談義の殆どは直ぐに忘れますが、話しの流れのなかでイメージとして受けとめたものは、何時までも心に残るものです。心に刻み込まれたイメージからやる気が生まれ、人は行動に向けて力強く歩き出します。
厳しい時代を戦い抜くコミュニケーションの重要さとイメージとやる気の関係について、じっくり考え話し合いたいものです。
なにわ法律事務所 所主

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