MAN会報
韓国ドラマに見る留学先

当会 特別顧問理事 宮武 明彦

 平成16年度にNHK・BSで放映された韓国テレビドラマ 「冬のソナタ」 以降、 韓国テレビドラマは日本の茶の間に確実に定着して来たように思います。 私も 「冬のソナタ」 に魅了されて以来、 数多くの韓国テレビドラマを見るようになりました。 韓国テレビドラマの中では、 しばしば主人公や友人が海外留学をする話が出てきます。 特に、 結婚に反対している親が二人を引き離すための手段として積極的に留学を勧める場面が多いように思います。
 数多くの韓国テレビドラマを見て来て不思議に感じたのは、 主人公や登場人物の留学先が英国であるという場面に一度も出くわしたことがないことです。 日本では、 英国は米国と同じくらい留学先として人気のある国なのに、 どうして韓国では、 留学先として英国が登場して来ないのか、 その理由を知りたくて色々調べて見ることにしました。 まず、 思い付いたのは、 過去に韓国と英国との間に何か思わしくない利害関係があったのではないかと考え、 歴史的な事実をひもといてみました。
 世界の7つの海を支配する野望を持っていた英国が、 北東アジアの歴史に登場するのは19世紀以降であり、 当然のことながら清国のみならず朝鮮半島の朝鮮李王朝にも興味を持っていたと考えられます。 当時の李王朝は、 世界史の中でも数少ない長期政権の王朝で、 14世紀から20世紀、 正確には1392年から1910年の500年以上にわたり、 明治政府による韓国併合まで続いた王朝でした。
 一般的に日本人は、 韓国はユーラシア大陸の東端に位置するため、 中国をはじめとして異民族の支配をたびたび受けていたのではないかと考えている方が多いと思いますが、 実際は、 韓国の歴史の中で、 異民族に支配された王朝は皆無で、 古くは、 三国時代の高句麗、 百済、 新羅、 そして統一新羅、 さらに次の高麗も朝鮮人が治めた王朝でした。 1300年前後に元 (モンゴル) の侵略を受けましたが、 王朝は高麗王朝の統治下でした。 1906 (明治39) 年から始まる40年間の日本の支配が、 朝鮮にとって有史以来はじめての異民族支配であったという歴史的事実を私達はまず知っておく必要があります。
 日韓の不幸な歴史が始まる当時の世界情勢を振り返りますと、 1904−1905年の日露戦争は、 単にロシアと日本との戦争ではなく、 帝国主義諸国の利害が複雑に絡み合っている戦争でした。 ロシアの南下政策を阻止したい英国は、 1902年の 「日英同盟協約」 を背景にアジアでの大きな利権を守りたいとの思惑がありました。 また当時、 アメリカはハワイ王国を併合し、 さらにフィリピンをスペインから奪還し、 中国に門戸開放を迫っていました。 日露戦争は極東におけるロシアの覇権をくい止め、 同時に韓国の独立と領土保全のために戦うという日本式植民地政策の一環でした。 日露戦争で使った戦費はおよそ17億円でしたが、 日本は、 その内の半分をロンドンとニューヨークの債権市場で外債を発行して賄うことが出来ました。 1905年には 「第二次日英同盟協約」 が締結されますが、 その内容は、 英国のインド領有と国境防衛措置を日本が承認することと引き替えに、 日本の韓国支配を英国が承認するとともに、 両国の軍事 「攻守同盟」 関係を始めて明確にしたものでした。 日本が日露戦争に英国、 アメリカの援助で勝利した後は、 両国の力を後ろ盾にして、 長年鎖国政策を取っていた韓国李王朝への植民地化政策を本格化させ、 最終的には1910年の日韓併合に繋がって行ったのです。
 このように英国は、 韓国における日本の支配を黙認した歴史的事実があったため、 韓国の人達に嫌われているのかもしれないと仮説を立てましたが、 韓国の人に意見を伺いたいと思い、 米山奨学生としてソウルより来日し、 大阪教育大学大学院で 「太宰治」 を研究しているジョン・ソミンさんに尋ねてみました。 彼女の答えは、 英国が留学先としてそんなに少ないとは思わないし、 日英間の歴史的事実は知らないとの意見でしたが、 韓国のonline researchを調べ結果を翻訳してくれました。 アンケート調査では1)米国(40%)、 2)豪州(16%)、 3)ニュージーランド(15%)、 4)カナダ(12%)、 5)日本(9%)、 6)英国(8%)で、 また、 平成17年9月ウォンガン大学の学生対象の調査では、 1) カナダ(28.5%)、 2) 豪州(23.6%)、 3)中国(14.6%)、 4) 米国(13.8%)、 5) ニュージーランド(10.4%)の順に人気が高い留学先でした。 一方、 onlineで調べた日本人の人気留学先は、 1)米国(44.5%)、 2)英国(13.4%)、 3)中国(7.7%)、 4)カナダ(6.4%)、 5)豪州(5.4%)、 その他(22.6%)でした。 彼女や韓国の友人の意見としては、 留学先を決める際には、 その国の物価や資格の取りやすさも重要な要素になっているとのことでした。 なぜ、 英国への留学生が少ないのか理由を明らかにするためには、 まだまだ、 韓国の多くの人達の意見を聞いてみる必要がありそうです。
(医療法人 宮武内科院長)
参考文献
李 進熙、 姜 在彦共著 「日韓交流史」 有斐閣選書 2002年2月25日
海野福寿著  「韓国併合」 岩波新書 2004年9月6日
姜 在彦著  「玄界灘に架けた歴史」 朝日文庫 1993年2月1日
横手慎二著  「日露戦争史」 中公新書 2005年8月10日


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