MAN会報

栄養学講座―その2
ミネラルについて

滋賀県立大学看護短期大学部教授
御堂筋アズマネットワーク顧問医師 藤田きみゑ

●前回のその1.タンパク質についてのお話に続いて、今回はミネラルについてのお話を致します。人の体に必要な栄養源の内、炭水化物(でんぷん)、たんぱく質、脂質は体を動かすエネルギー源、例えば車のガソリンに例えられるものであり、ビタミン類やミネラル類は体の代謝を助ける補酵素の働きをするもの、即ち車のエンジン内を循環するエンジンオイル、あるいはエンジンの過熱を防ぐために循環する水に相当する働きをする、人にとって必要不可欠な物質と考えていただければよろしいかと思われます。

●最近、TV(テレビ)等で骨粗鬆症に対するCa(カルシウム)の必要性や、免疫力低下に対するZn(亜鉛)の必要性等が啓蒙されたりするようになりました。しかしミネラルはV.CやV.B群のように単に多く摂ればよいというものではなく、数多くのミネラル類同士がバランスを取り合い、お互い影響し合っており、ある一種のみのミネラルを多量に摂取し過ぎるを体内に蓄積され、かえって弊害となるというその性質から、ミネラルの摂取は多すぎても少なすぎてもよろしくないのです。

●しかしご安心下さい、最近、数多く市販されているミネラルの錠剤のごとく薬物として服用するのではなく、副食物として食べ物で摂取するミネラル類に関しては、殆ど過剰摂取という心配はありません。

●そのような観点からも、様々なミネラルを含む食品を数多く摂っていただいたほうが良いのです。具体的に主なミネラルはどのような働きをしているのか、どのような食品に多く含まれているのかを一覧表にいたしました。ご参照下さい。

●日本人に最も多いとされているミネラル欠乏症は、鉄の不足によって発症する鉄欠乏性貧血とヨード不足によって起こる甲状腺腫です。ひじきは非常に優れた食品で鉄とヨードを多く含 んでいます。人参や油揚げと一緒に煮込み、仕上がりにすり胡麻を多く振りかける、こういった”おばんざい”が実は非常に優れたミネラル源であったりするのです。海草類は海より採れることから有効なミネラル源として、またうまみ成分抽出の”だし”として古くより日本人に好まれてきました。その成分の多くはヨウ素(ヨード)であり、またナトリウム、カリウム、クロムなどが多くのミネラル類を含みます。毎朝一杯の味噌汁(最近の研究で味噌には癌予防物質が含まれており癌の予防効果が期待されていること、また、毎朝味噌汁を飲用することで帳内の代謝活性を高めることが判明しています。)の中に野菜と一緒にわかめを多めに入れたり、酢の物にしてお上がりになることもお勧めします。

●私は基本的なミネラル摂取のために、NaCl(塩)のみの組成である精製塩を使用するのではなく、海水塩、あるいは岩塩を、また味噌・醤油なども天塩などの自然塩を使用した製品を調理に使用することを勧めています。生きとし生ける動物は全て海から生まれました。人間の体液組成は生理的食塩水、即ち海水の組成に限りなく近いのです。海水には実に様々な数多くのミネラルが含まれてあり、それ故に自然塩を調理に使用することにより、食事毎に体に必要なミネラルが自然に口から入るということになります。勿論、塩分の摂りすぎは体に好ましくない結果を招くこともあり、ある程度控えめにする必要性がありますが、腎臓病やある種の高血圧症、重度の心疾患、肝疾患を除いては、一時期、塩分制限が声高に指導されていた時期ほど、厳密な塩分制限は私個人としては必要ないのではと考えています。特に、暑い夏の盛りにはNaClをはじめK(カリウム)は汗により多く失われ、V.B1の喪失と共に夏バテの原因になると考えられています。このカリウムはNa(ナトリウム)と密接な関係があり、お互いにバランスを取り合っています。体からカリウムが多く失われる暑い夏の時期には体を冷やしてくれるカリウムを多く含むトマトやきゅうり、なす等の夏野菜や、西瓜や桃、梨などの果物が多く実ります。そして私の小さかった頃は、夏の暑い日の水浴びの後で、摂りたてのトマトやきゅうりに荒塩をまぶしてかじったら、西瓜に塩をほんの少し付けて食べたりしたものです。

●誰もNaとKのバランスなど考えも及ばなかったのですが、実に自然な絶妙の組み合わせというべきでしょうか。この様な理由で、夏の暑い時期にはカリウムを多く含み生で食べられる野菜や果物を摂った方が良いのですが、反対に冬の寒い時期には、カリウムを多く摂りすぎると細胞がゆるみ、体が冷えやすくなるため、加熱しカリウムを減らして食べる白菜、菊菜等の葉野菜や根野菜が中心となり、大根なども大根おろしよりおでんや風呂吹き大根が好まれるようになるのです。またミカンなどもV.Cの補給には大切な冬の果物ですが、大量に食べ過ぎると体を冷やし、かえって風邪をひきやすくなり、ミカンが豊作の年は風邪が大流行するというのは、この様な事が原因ともいわれています。さらにパパイヤやパイナップル等の南洋の果物や苺なども寒い冬の最中に大量に摂取すると体を冷やしてしまいます。以上のような理由により、冬に多くの果物や夏野菜 のレタスやトマトまたはキュウリを食べるのは理にかなわないことであり、旬の野菜を旬の時期に頂くという古人の知恵が、いかに優れたものであったかを推し量ることが出来ます。

●もうひとつ私が有効なミネラル源としてお勧めするのは胡麻(ゴマ)です。胡麻はカルシウムや鉄などのミネラルを多く含み、V.E源としても優れています。個人の好みもありますが、口に少しざらついた感じがあるものの栄養学的な見地より白胡麻より黒胡麻をお勧めします。特に、栄養が偏る下宿学生や体力のない学生に、朝食と夕食のご飯の上に大さじ一杯の黒胡麻をよく摺ったものと、自然塩を小さじすりきり半分程度ふりかけ、よく噛んで食べるように指導しています。最近の私の研究で、20歳代の若年女性でも骨量(骨の密度)が低い者達がおり、これら低骨量の学生の多くは牛乳を飲み、小骨を多く含む小魚も食べていたのですが、カルシウム以外の他の多くのミネラルバランスが摂れていないことが判明しました。つまりカルシウムとタンパク質は骨を形成するのに必要ですが、それだけをせっせと食べていても骨量は増加しないということなのです。バランスよくミネラルを摂取する、それは一食品の内でも様々なミネラルが含まれているものを選択するのがより有効的だということなのです。

●最後に全粒穀物について少し触れます。全粒穀物とは玄米や小麦全粒紛などのように精製していない穀類を指します。全粒穀物はマンガン、マグネシウム、セレンなどの多くのミネラル類の他に、V.E,V.B、さらに精神安定に働くイノシトールを含んでいます。全粒穀物に含まれる胚芽や糖は現在では見捨てられ勝ちですが、せめて現在白米を食べておられる方は胚芽米に、また胚芽米を食されている方は七分づき米をというように少しでも糖がついているお米を食されるのがよろしいかと考えます。特殊な食べ物でなく毎日摂取するものを考え工夫する、このことが栄養摂取の最も基本的な理念と考えています。次回は油脂についてお話いたします。


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