MAN会報
吸入ステロイド薬雑感
当会 特別顧問理事 宮武 明彦

 気管支喘息患者さんにとって吸入ステロイド剤はまさに救世主とも言うべき治療法であるが、この吸入ステロイド剤が今日のように浸透し一般化されるまでには良い道のりがあった。フルタイドやパルミコートが導入された5年前以前ではベコタイド、アルデシン〔いずれもベクロメサゾン・エアロゾルタイプ〕しか日本では認可されていなかった。しかし、日本もここ一年でやっと、諸外国と同様に、複数の吸入ステロイド剤から患者さん個々に通した薬剤を選択できるようになった。即ち、お仕着せの既製服の時代から何者かの洋服が選べる時代になった訳である。現在では三種類のステロイド薬〔ベクロメサゾン、フルチカゾンおよびブデソナイド〕と二種類の吸入剤型〔粉あるいはエアロゾル〕の組合せが、その人の病状にあるいは本人の嗜好に合わせての投薬が可能になっている。現在、日本で保健医療が適応され国内で使用可能な吸入ステロイド薬は表1のごとくである。



 毎月来院されるおよそ800人ほどの喘息患者さんにとって、未だ十分ではないものの、治療の選択肢が増え、よりきめの細かい治療が出来るようになったことは本当に喜ばしいことだと考えている。特に、私が奨めた薬剤により患者さんの喘息症状が改善した時には嬉しくて仕方がない。ある意味では毎日の診療は驚きの連続でもある。しかし、残念ながら新しい薬剤が合わなくて、昔から使用している薬剤に戻る人も決して少なくないし、また、どの吸入ステロイド剤もぴったりと合わないで、ステロイド剤以外の他剤を併用しなければならない患者さん達も少なからず存在する。特に、このような患者さん達には、吸入ステロイド剤がより効果を発揮できるように、私自身やスタッフによる吸入指導を頻回に実 施するようにしている。他の内科の病気と異なり、薬だけ内服していれば事が足りるわけではないところに、気管支喘息治療の難しさと奥深さがあるのかもしれない。
 この様な訳で、少量の血液で遁伝子チップ等を調べれば、たちどころにその患者さんに最もマッチしたオーダーメイド治療が現実のものとなる、といった未来の治療までには未だしばらく時間が掛かりそうである。

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